◇4次障害
障害を持った非行少年たちは、少年院を出た後は社会で真面目に働きたいと思っている。だが、その多くは、理解のある会社で職を得ても、長くて3カ月くらいで辞めてしまう。認知機能の弱さ、対人スキルの乏しさ、身体的不器用さ。これらが原因となり、非行に理解はあっても発達障害や知的障害の知識が不十分な雇用主から叱責され、やる気があっても続けられないのだ。
職がなければお金もない。そこで安易に窃盗などに手を染めることになる。著者はこれを「4次障害」だと考える。1次障害は障害自体によるもの。2次障害は周囲から障害を理解されず、学校などで適切な支援を受けられなかったことによるものだ。3次障害は非行化して矯正施設に入っても理解されず、厳しい指導を受け、ますます悪化することだ。そして4次障害として、社会に出てからも理解されず、偏見もあり、仕事が続かず再非行につながってしまう。
◆忘れられた人々
◇理解できない凶悪犯罪の背景
「なぜこんな犯罪を?」と首を傾げたくなる事件をよく耳にする。著者の印象に強く残っているのは、2014年に起きた神戸市長田区小1女児殺害事件だ。ビニール袋に入れられた遺体が雑木林で見つかったのだが、そのビニール袋には、たばこの吸い殻と犯人の名前の書かれた診察券が入っていた。どうして犯人は、すぐに身元が割れるようなことをしたのか。
後になって容疑者が療育手帳(軽度知的障害の範囲)を所持していたことがわかり、その奇異な行動の意味が理解できた。知的障害のある人は、後先を考えて行動するのが苦手だ。そのため、診察券から素性がバレると想像できなかったのだろう。
「軽度」という言葉から誤解を招きがちだが、軽度知的障害や境界知能を持っている人たちは、実は多くの支援を必要としている。ふだん生活している限りでは、ほとんど健常の人たちと見分けがつかず、通常の会話も普通にできる。そのため、障害があるとは思われない。先の容疑者も、陸上自衛隊に勤務し、大型一種免許や特殊車両免許を持っており、それなりに能力があったのは確かだ。
◇受刑者の半数は知的なハンディを抱える
彼らはいつもと違ったことや初めての場面に遭遇すると、どう対応していいかわからず思考が固まってしまうことがある。例えば、いつも乗っている電車が人身事故で止まってしまった場合、柔軟に違うルートを探すといったことは困難だ。



