JR東日本とKDDIがまちづくりで協業、「空間自在」な新たな“くらし”の創造へ

東日本旅客鉄道(JR東日本)とKDDIは、「交通」と「通信」という二つの社会インフラが融合した「分散型まちづくり」の共同事業化に向けて動きだした。その狙いと、両社がプロジェクトに込める思いについて、JR東日本 執行役員 事業創造本部 副本部長の表輝幸氏と、KDDI 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長の藤井彰人氏に聞いた。

「品川開発プロジェクト」を未来社会の壮大な実験場に

――両社で取り組む「空間自在プロジェクト」が動きだした経緯と、プロジェクトの概要について教えていただけますか。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、生活スタイルや働き方が大きく変化しました。時間や場所にとらわれない働き方やくらしが日常化したことで、従来のような拠点集約型の社会から、分散型社会への大転換が起こり始めています。

JR東日本とKDDIがまちづくりで協業、「空間自在」な新たな“くらし”の創造へ 東日本旅客鉄道
執行役員 事業創造本部 副本部長
表 輝幸氏

 JR東日本とKDDI様は、その変化に対応し、両社が強みとする交通のリアルネットワークと通信のバーチャルネットワークを融合させて、都市部と都市周辺や日本各地のサテライトシティーが一体となって機能する分散型まちづくりに取り組むことにしました。どこにいても心豊かに生きられる、ヒトを起点とした「空間自在」の生活スタイルや働き方の実現を目指します。

 都市部のモデル地域として、山手線の高輪ゲートウェイ駅を中心に開発を進めている「品川開発プロジェクト」(区域面積約13ヘクタール)を選定しました。JR東日本が「100年先を見据えた心豊かなくらしづくり」を目指し、2024年度に第Ⅰ期のまち開きを予定している事業ですが、この開発をKDDI様と共同で推進します。

 さらに、都市周辺とサテライトシティーの開発については、2021年春以降に、東京と神奈川、埼玉、千葉エリアを対象として、多拠点とつながる分散型ワークプレイスのトライアル拠点を開設し、実証実験を順次実施します。

 また、新幹線車両の一部をリモートワーク推奨車両とし、該当車両内に通信回線を提供することで、オフィスと同じ働き方の実現を目指す実証実験も2021年2月に開始しました。

――プロジェクトにおける両社の役割はどのようになっているのでしょうか。

JR東日本とKDDIがまちづくりで協業、「空間自在」な新たな“くらし”の創造へ KDDI
執行役員 ソリューション事業本部
サービス企画開発本部長
藤井彰人氏

藤井 「品川開発プロジェクト」におけるオフィスや住宅、商業施設、ホテル、教育・文化施設など、リアルな空間づくりはJR東日本様にご担当いただきます。新幹線のリモートワーク推奨車両のような、都市部と都市周辺、サテライトシティーを結ぶリアルな交通ネットワークの整備についても同様です。

 一方でKDDIは、5G(第5世代移動通信システム)やIoTなどの先端通信技術を駆使し、都市部におけるバーチャルな空間づくりや、都市部と他の空間とを結ぶ通信インフラの構築、サービスの実装などを支援します。リアルとバーチャル、交通と通信という両社の強みを持ち寄り、時間や場所にとらわれない働き方やくらしを創出することを目指しています。

 例えば、JR東日本様は「品川開発プロジェクト」で、街区内の移動をサポートするパーソナルモビリティーや自動配送ロボットなどのモビリティーサービス、高輪ゲートウェイ駅と周辺エリアを結ぶラストワンマイル・モビリティーサービスの提供を検討しており、これらのサービスを5GやIoTの技術でサポートしていきます。

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