AGRISTも、収穫ロボットの製造・販売だけを行うアグリベンチャーではない。齋藤CEOは、「私たちのDX(デジタルトランスフォーメーション)技術が、食料自給率の向上に役立つものでありたい」と強調する。実際、AGRISTでは、農業ロボットだけでなくスマート農業の構築、養液栽培の積極活用、新たなデータ活用策の創造など、ピーマン栽培の効率向上を目指した統合的な取り組みがなされている。
AGRISTの自社農場は現在(借入地も含め)9反あるが、いずれでも日射量やCO2量、天候変化予測、農業ハウス内の温度や消費エネルギーなど各種のデータが一目で見られるようになっている。「各種のデータが見られるだけでも畑に出向く時間が減り、当社のハウスでは県内の平均よりも約5トン、4割ほど収穫量が多くなっています。この増収分を新規就農者の生活や営農支援の資金とすることができれば、新規就農者は多額ではないものの早い段階から収入を得られ、経済的な不安が小さい中で農業に取り組んでいけるような環境を創れます」(齋藤CEO)
あえて土耕栽培にこだわらず、養液やヤシ殻培地による栽培などにも挑んでいる。ターゲットにしているのは耕作の手間を省くことと害虫の発生を抑えること、そして栽培の再現性を高めることだ。
さらに6次産業化を積極的に志向することで、加工品ならば使えるピーマンの有効利用策を練っている。ちなみに収穫ロボットのAIは、出荷基準に合致したピーマンを探し収穫する。しかし逆に、出荷基準に該当しないピーマンを収穫する作業プログラムに切り替えれば、農業者は品質の良いピーマンの収穫に集中でき、2次的な作業はロボットがやっておいてくれるという役割分担をつくれる。
「農業というビジネスは、まだまだビジネスとしてのセンスや練度を上げる必要があると思います。テクノロジーとビジネスの在り方のベストマッチングを追求するのが私たちの仕事であり、自給率の向上にも寄与できると自負しています」(齋藤CEO)