企業博物館は
多様なニーズに軽やかに対応できる
このように、企業ミュージアムは、公的な役割を果たしながらもすでに「持ち出し」とは言い切れない部分を内包しているのである。
また企業ミュージアムは、気候変動対策や人材不足を補うなど社会課題に取り組む企業の貢献度や、企業がもたらす「未来の姿」を扱うことも可能だ。これは、一般の「博物館」とは明らかに一線を画す部分である。自社の技術が課題解決にどのように活用されるのか、自社の業務が明るい未来をもたらす姿勢をアピールすることもできる。こうした社会課題を背景に、比較的早いスパンでリニューアルを行う企業も少なくない。公立博物館に比べ短いスパンでリニューアルできる軽やかさと自由度がある。
このように多様なニーズに軽やかに対応できる企業ミュージアムであるが、企業によって、扱う製品によって、そのあり方はさまざまだ。今後は新たな展示方法、社内リソースの活用、イベントやワークショップの開発などが増えていくだろう。もちろん、全ての機能を満たさなければならないということではない。自社が求める成果を明確にし、目的に従って企業ごとに戦略的に機能を選択していくことが必要になるだろう。このことから施設の独自性を表現する時代に入っていくと考えられる。自社のリソースを活かしながら展示開発、ストーリー展開、対話の場の提供など、外部の専門能力との協働によって、これまでにない話題性に富む企業ミュージアムが求められていく。