脱炭素経営のステップに沿った伴走支援も強み

「炭削くん」の強みは大きく二つある。まず製品面では、低価格であること(初年度無料、2年目以降は税込みで月額2200円~)。競合製品よりも1桁安い。もう1点は、算定範囲がScope(スコープ)1~3まで含むこと。

Scope1は自社排出、Scope2は他社から供給された電気などの使用に伴う間接排出、Scope3は商品・サービスの購入やサプライチェーン全体の間接排出を表す。短いサイクルで機能の変更や改修を繰り返すアジャイル開発により適切なバージョンアップが行われることが挙げられる。

加えて銀行員のサポートが付随する。顧客はCO2排出量の算定支援はもちろん、脱炭素経営のステップに沿った伴走支援が受けられる。ステップには、脱炭素経営に取り組む意義を「知る」、自社のCO2排出量を「測る」、目標達成に向けて「減らす」、さらに社内外に取り組み状況を「発信する」があり、自然に脱炭素経営の磨き上げが行われる仕組みになっている。

「炭削くん」は地域企業個々の脱炭素経営に資する重要なツールであることは間違いない。笠原頭取は、「金融機関が地域のデータを把握し、お客さまに寄り添うことで課題を明らかにし、適切なソリューションを提供するビジネスモデルを全国に広げていきたい」と地域企業のサポートに意欲を示す。

サービス開始1年で導入3000社突破。肥後銀行が挑む地方から広げる脱炭素経営

同時に笠原頭取の目は、九州・沖縄経済の持続的な成長にも向けられている。その成果の一つが、九州・沖縄・山口の地方銀行13行が連携して誕生した「Q-BASS(キューベース)」だ。このQ-BASSは、「新生シリコンアイランド九州」の実現に向けて、この地域の経済成長と半導体産業の振興を推進するとともに、サステナビリティ経営支援の強化を重点課題に掲げている。

肥後銀行は炭削くんを活用して持続可能な脱炭素への取り組みを広げていく。

導入事例「炭削くん」は中小企業の味方。CO2削減をもっと広げていく
サービス開始1年で導入3000社突破。肥後銀行が挑む地方から広げる脱炭素経営Lib Work 瀬口 力社長
九州を中心に千葉・神奈川にも拠点を持つハウスメーカーのLib Work(リブワーク)。同社は資材調達から完成までに排出される温室効果ガスを数値化するCFP(カーボンフットプリント)を業界で初めて宣言した。「しかし、メーカーに製造工程でどれだけのCO2を排出しているか、全ての品番においてCO2を算出して明示してほしいと取引先に依頼したのですが、どこも数字を出せませんでした」と瀬口力社長は嘆く。「意識がまだ低いのです。CO2の算定をする企業が増えることがカーボンニュートラル(CN)への第一歩だと感じています」。

Lib WorkはCNに取り組む姿勢を明確にしたものの、「最初はどこから手を付ければいいのか分からなかった」というのが本音だった。そこで肥後銀行のCNコンサルティングを活用して取り組みを進める中で、「炭削くん」を紹介された。

瀬口社長は使い勝手の良さをこう評価する。「中小企業がCO2を正確に算定するのは難しい作業ですが、『炭削くん』はとても使いやすい。当社のような拠点が複数ある場合でも、拠点ごとに排出量の管理ができます」。

同社では自社の取り組みを踏まえ、取引先にCNに対する意識や行動を問うアンケートを計画しているという。

「アンケート結果に基づき取引先のランクを決め、取引量を決めていこうと考えています」

Lib Workの前向きな姿勢は業界のCNを加速させそうだ。
●問い合わせ先
株式会社肥後銀行
経営企画部サステナビリティ推進室
TEL:096-326-8603