長期ビジョンで「総合物流企業グループへの進化」を掲げるJR貨物。25年4月にグループ企業である日本運輸倉庫を総合物流事業の中核企業と位置付け、社名をJR貨物ロジ・ソリューションズに変更する。これまでの“鉄道オンリー”の体制から、グループの倉庫機能などを組み合わせた総合的なソリューション提案にも力を入れている。
「唯一無二の機能である貨物鉄道の強みを生かしながら、グループ企業が持つさまざまな機能を有機的につなげた物流商品をセットで提供していきます」
例えば、前述のネスレ日本のケースでは、JR貨物の百済貨物ターミナル駅(大阪市東住吉区)内にある「駅ナカ倉庫」を活用。貨物列車が倉庫内に直接入線できる利点を生かし、効率的な物流を実現している。

課題は自然災害など輸送障害時のBCP対応
もっとも、貨物鉄道には課題もある。指摘されるのが、やはり、自然災害などで頻発する輸送障害だ。中でも、輸送障害が発生した際、スムーズな代行輸送などを行うBCP(事業継続計画)体制の構築は喫緊の課題とされる。
その対策として、同社は24年、内航船を大手物流会社と共同保有。鉄路が遮断された際に素早く代行輸送できるスキームを確立した。加えて、自治体との協議の場を通じて、代行トラックの駐車場確保や代行船舶が港湾を迅速に使用できるための調整を進めている。さらに、貨物駅構内の用地を有効活用して、代行輸送の拠点駅として整備する取り組みも行っている。
他方、在来線インフラの強靱化も不可欠。「当社は各JR旅客会社から線路を借りて運行する立場ですが、安全は鉄道会社の基本。在来線インフラの維持・強化に向けたさらなる国のサポートがあれば、ありがたいです」と語る。
政府は23年、物流危機への対応策として、今後10年程度で貨物鉄道と内航船の輸送量を倍増させる方針を打ち出し、トラックからのシフトを容易にする31フィート大型コンテナの購入補助などの予算措置を拡充した。

麦谷部長は「鉄道への高い期待感は前向きに受け止めている」と歓迎する一方、「すぐに倍増させることは難しい。まずは現有インフラの中で当社としてできることに着実に取り組んでいく。それを達成した上で、倍増に向けて、インフラ増強などの必要な措置について、国などの関係者と相談していきたいと考えています」と2段構えで取り組む方針を示す。
「JR貨物が発足して38年がたちますが、今が一番注目を集めています。その中で輸送機関としての存在感をいかに出していけるか、ここ数年が正念場です。従来の延長線上にない大胆なチャレンジによって、持続可能な物流の実現に貢献していきたいと思っています」と決意を語る。