
「AIツールを導入したのに成果が出ない」——この経営課題の真因は、ツール選びでもAIの精度でもない。データは蓄積されているのに、現場の担当者が自分でデータを引き出し、判断に使える状態になっていないことにある。つまり、多くの企業が間違った「データ民主化」を進めてしまっているのだ。この構造から抜け出すために、経営は何をすべきか。自社の現在地が分かるセルフ診断とともに考える。
「データ民主化」、あなたの会社は正しくできているか
「AIツールを導入した企業の多くが、十分な成果を出せていない。それが現場の実感です」
企業のデータ・AI活用の厳しい現状を語るのは、NTTデータテレコム・ユーティリティ事業本部 デジタルエクスペリエンス事業部 データドリブン統括部部長の本村昭太郎氏だ。さまざまな業種、企業規模の現場に立ち会ってきた経験から出る言葉だけに重みがある。
AIツールの導入の成否を分けるのは、AIそのものではない。その手前にある「課題の定め方」と「データの状態」なのだ。
さらに本村氏はこう続ける。「『データ活用の出口が分からない』というお客さまの声を、これまで何度も聞いてきました。売り上げを伸ばす、コストを下げるという、経営として目指すべきゴール(出口)に、手元のデータをどう結び付けたらいいのかが分からないというのです」。
なぜデータと経営のゴールが結び付かないのか。問題の根は、多くの企業が進めてきた「データ民主化」の在り方にある。
「『データ民主化』の目的を、データを『見える状態』にすることだと捉えてしまっている企業が多いのです。しかし、データを『見える化』するだけでは事業の成果にはつながりません。この間違った『データ民主化』が、データ活用が進まない真の要因なのです」(本村氏)
データの活用についてはこんな調査結果もある。ガートナーは、“日本企業のデータ活用に関する最新の調査結果を発表:全社で十分な成果を得ている組織の割合は2.4%にとどまる”※と発表している。
※Gartner(R), Press Release, 2026年1月8日, “Gartner、日本企業のデータ活用に関する最新の調査結果を発表:全社で十分な成果を得ている組織の割合は2.4%にとどまる” https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20260108-data
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現場で起きているのはこんな光景だ。BIツールを導入し、立派なダッシュボードを構築する。しかし、事業や部署ごとに見るべき数字や分析の切り口は異なるため、現場の担当者はそのダッシュボードを眺めるだけでは具体的なアクションを起こせない。結局、データをCSVでダウンロードし、Excelで自分用に加工する羽目になる。
さらに深刻なのは、スピードの問題だ。ダッシュボードを追加・改修しようとすれば、IT部門への依頼、要件定義、開発から受け入れテストと工程を重ね、数カ月、長ければ半年以上かかることも珍しくない。新しいダッシュボードが完成して使えるようになる頃には、市況も事業の前提もすでに変わってしまっており、全く役に立たない事態になりかねない。
データは「見える」ようになった。しかし、現場が自らデータを引き出し、判断に使う仕組みがない。これこそが、多くの企業に共通する「構造的欠陥」だ。
では、正しい「データ民主化」とは何か。「現場担当者が自分でデータを引き出して活用し、その場で意思決定を行って、実業務の成果を生み出せること」だと本村氏は定義する。データの「見える化」はあくまで入り口に過ぎないのだ。
果たしてあなたの会社は、正しい「データ民主化」を進めることができているだろうか。そのAI活用は、本当に事業成果につながっているだろうか。
まずは以下の【セルフ診断チェックリスト】で、自社のデータ・AI活用の現在地を確かめてほしい。
あなたの会社は、幾つチェックが付いただろうか。2個以下なら、あなたの会社はすでに危険域にある。そして3個以上の会社でさえ、成果が広がらない「壁」に突き当たっていることが多い。診断結果とその意味——現場を劇的に変えた打ち手の全貌を、次ページで明かす。
