そして、繰り返し肯定の言葉を引き出すイエスセット話法と組み合わせることで、相談者は知らぬ間に、占い師に絶大な信頼を寄せてしまうことがあるのです。相談者は、占い師が信頼できると分かった途端、堰を切ったようにすべてを話すようになりますから、あとはバックトラッキング(相手にとって好ましい感情に合わせた言葉を返す)しながら経緯や望みを聞き出し、時間をかければ解決する(解決するのは少し先になる)といった示唆をしながら、相談相手になるだけです。そのうち相談者の熱も収まり、冷静になって自然に解決することがほとんどなのです。

 広告も同様にこの心理効果を使って、受け手の「関心、信頼、感情を引き出す」ということに尽きるでしょう。

「イメージ広告」と記憶の関係

 作り手の視点で見ると記憶に残る広告を生み出すことはとても難しいものです。それでも、私たちの記憶に残る広告はありますよね。これにはどんな特徴があると思いますか?

 まず、記憶には、入ってくる情報を過去の体験・経験に紐づける「エピソード記憶」と、知識として学習して記憶する「意味記憶」があります。
エピソード記憶は、あるトリガーをきっかけに記憶を呼び起こします。広告なら、映像、音、驚き(ストーリーや企画の意外性)などの刺激がトリガーに当たるでしょう。もちろん元々記憶に無いものは呼び起こされることもありません。

 さらに、科学的に言うと、理化学研究所の2012年の発表で『記憶が特定の脳神経細胞のネットワークに存在することを証明』によると、心は物質の変化に基づいており記憶は特定の脳細胞に物理的に存在し刺激によって記憶が呼び起こされる、とあります。実験では、刺激として(マウスに)軽い電気ショックを使って再現しています。

 ここでは、記憶は物理的に存在しているという事実と刺激によって記憶は呼び起こされる、ということが分かります。

 実験と比較して、私たちが広告から受ける刺激は?と言うと、電気ショックと比較すると明らかに弱そうです。現代の広告は4Dのように体験が伴うものは少ないので、なかなか記憶に残りにくいものであるとも言えそうです。それならなおさら、作り手は、広告はスルーされてしまう可能性が高いという前提に立って広告プランを考えるべきとも言えます。予算をたくさんかけて"アート作品"をつくり上げたとしても、相応の評価として、ブランドの評価が上がったり商品が売れるはずだ、と考えるのは幻想に近いと言えます。

次のページ

デジタルを使った心理的アプローチ

TOP