原則として投資家は動かなくていい
仮に、3分の2の確率でブレグジットが否決され、その場合の株価上昇率は5%が期待でき、3分の1の確率でブレグジットが可決され、その場合の株価下落率は10%に及ぶと見込まれるとしよう。読者なら、どうされたいか? 株式を買うか、空売りするか、あるいは何もしないか。
「期待値はゼロなのに、リスクを取るのは割に合わない」という理由から、「何もしない」と答えを出したとすれば、優等生的な答えであり正解だ。
では、既に株式に投資している人はどうしたらいいのだろうか。リスクがあるのに、期待値はゼロなのだとすると、持ち株を売りたくなるかもしれないが、これは正解だろうか。
実は、大まかに言うと、プラスの場合の期待値とマイナスの場合の期待値の影響が均衡するように現在の株価を付けるのが株式市場の機能なのだ。現在、市場参加者が見込んでいる上下の確率と影響が正しいとするなら、株価はブレグジットに関する投票のリスクも織り込んで形成されているはずであり、それ以外のリスクも合わせて資本を提供することのリスクプレミアムが割引率に織り込んで形成されているはずなのだ。
株式市場がそれほど立派な機能を持ったものだとは信じられないという人もおられよう。筆者もその意見に半ば同意するが、それでは、市場が情報を織り込んで形成した株価を「誤りである」として、別の株価が正しいことを主張できるだけの根拠も判断力も筆者にはない。勝手に推測するのは失礼かもしれないが、読者も、さらには他の市場参加者も大半の方がそうなのではないか。
投資家は「今までの投資額が自分にとって適切だと思っていたのであれば」、ブレグジットを巡る投票を理由に投資額を変える必要はないというのが原則論的な正解である。
もちろん、市場参加者の評価が間違っていると思う投資家は、株を買い増すなり、空売りするなりしても構わない。
あるいは、ブレグジットのリスクを考えた時に、あらためて「リスクを取るのは嫌だ」という感情が増して、株式投資の額を減らす人がいるなら、それはその人にとって少なくとも主観的には合理的な意思決定なのだから、他人がこれを責めるには及ばない。



