同じナガセの傘下でも
東進と早稲田塾で異なる強み

 同じナガセ傘下の予備校でも、東進ハイスクールと早稲田塾は強みが異なることが知られている。

 東進ハイスクールは、タレントとしても有名な林修センセイを筆頭に、有名講師がきらびやかに揃った「講師陣が強み」の予備校で、受験生に試験突破のための勉強のポイントを教える技術では、日本の最先端を行っている。

 一方の早稲田塾は、試験ではなく論文や面接で選考されるAO入試に強い予備校として知られている。講師が生徒1人1人の強みを引き出しながら、個人のアピールポイントや関心をどうAO受験につなげるかを考えてくれるところがウリなのだが、ここにビジネスモデルとしては1つ問題がある。

 AO入試は実は多くの大学にとって、入学者の早期確保の手段になっている。少子化における大学経営を考えると、入学者を早く集めたほうが経営が安定する。その理由からAO入試は、どこの大学でもスケジュールを大幅に前倒しして実施される。時期的には夏休み前から秋口には合格者が決まることになる。

 一方で筆記による入学試験は、私立は1月末、国公立は2月から3月初めに実施される。このことで、予備校ビジネスとしての儲けが構造的に違ってくる。同じナガセの予備校でも、東進ハイスクールの生徒は12月に直前模試を受け、本命の受験校を絞り、冬休みには直前対策の講義を2週間びっしり受けて、1月と2月も講義のビデオアーカイブを視聴しながら弱点部分を補強する。ビジネスとして見れば、試験日ぎりぎりまで収益が上がる「構造」になっている。

 一方で、AO入試で合格が決まるとどうなるか。筆者の娘について言えば、9月に本命の大学から合格通知をもらったら、そこで予備校は実質退会状態になってしまった。本当は合格後も、大学で学ぶための学力維持プログラムなどを受講すればよかったのだが、本人のモチベーションとしては、もう予備校へは通えなくなってしまった。まあ、当然といえば当然だろう。

 今回、早稲田塾の閉鎖を見る限り、教育をビジネスとして捉えた場合、筆記試験の受験者を対象にするビジネスの方が、AO入試受験者を対象とするビジネスと比べて、通年でしっかり儲けられるという点で、差が出てしまったように感じられる。

 さて、3つ目の構造変化として、大学受験の重要度の低下が挙げられる。これは現在進行形でこれから先、10年くらいの期間でもっとはっきりとしてくる傾向と思われ、教育・学習塾産業をさらに大きく変化させるだろう。