講演で「表裏一体」論について質問されると、彼は日本経済をデフレから脱却させることができて、日本のGDPを大きくすることができれば、それに伴って国防費が増やせると言った。その意味で、強い経済の再生は外交安全保障政策の立て直しのために不可欠と、主張した。

 つまり彼がデフレ脱却を目指すのは、人々により良き暮らしをもたらしたいからではない。軍備増強のためにデフレ脱却を目指すのだと言っている。

 このような発想に基づいて経済政策を行えば、経済活動は必ずバランスを崩して失調して行く。

 現実に、カネの世界をみれば、国債市場と株式市場が、今の日本ではまるで正常に機能していない。安倍首相「ご指名」の黒田日銀が、根拠も希薄な「2%物価目標」の旗を掲げて、国債や株式を買いまくる異常な手法でカネをばらまいているからだ。

 いずれの市場においても、日本銀行の存在感があまりにも巨大化している。市場では今や、日銀が許容する範囲でしか相場が動かない。これは、もはや単なる呼吸困難の域を突き抜けている。既にして窒息死状態だ。

 モノづくりの世界も、チームアホノミクスが発した「稼ぐ力を取り戻せ」という指令に追い立てられて、実に息苦しい状況に陥っている。

「攻めのガバナンス」などという定義矛盾的な言葉に尻をたたかれて、ひたすら高収益を追求しまくることを強要されている。

 追い詰められた彼らが、検査データの改ざんなど、不正な手口をついつい強化してしまう。そういうやり方で、「稼ぐ力」が強化されたかのごとき風情を取り繕ってしまう。そんなことになってしまっているのではないか。今後、ますます、そのような方向に突き進んでいってしまうのではないか。

「働かせ方改革」で
人間でなく「歯車」化する働き手

 そして、ヒトの世界については、もはや、多言を要しない。チームアホノミクスがつくった「働き方改革」という造語がどんどん独り歩きして行く。

 この造語が本当に意味するところは、「働かせ方超効率化のためのたくらみ」である。

 その一環を構成している「高度プロフェッショナル制度」の本名は「タダ働き青天井化のための仕組み」にほかならない。同じく「働き方改革」の中に組み込まれた同一労働同一賃金や長時間労働の是正も、チームアホノミクスにとっては、「労働生産性向上」のための施策に過ぎない。

 安倍政権による「働き方改革」の下で、人々はどのような世界に追い込まれて行くことになるのか。

 それを知ることは簡単だ。かのチャールズ・チャップリンが世に送り出した映画「モダン・タイムス」を観ればいい。