内閣改造で求心力回復を狙う安倍政権だが、「アベノミクス」も一時の勢いはなく、国民は豊かさを実感できていない。井手英策・慶応大教授は「日本は多くの人が貯蓄をする余裕がない経済構造に変わったから」と分析する。民進党の政策ブレーンでもある井手教授に、今後、取るべき経済政策、アベノミクスへの対抗軸の具体案を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
成長追求型の経済政策は限界
景気拡大と暮らしは別のもの
――景気拡大局面が続き、雇用も完全雇用状態だというのに、多くの人が実感できていません。
好景気が長く続くことと、人々の暮らしが良くなることは別のものになっています。戦後最長の景気拡大局面だった小泉政権の時もそうでした。
世帯当たりの可処分所得は97年をピークに減り続けています。世帯収入300万円以下が全体の33%、400万円以下だと5割近くに上ります。
共稼ぎが増えているから、世帯では働く人は増えているにもかかわらず、収入はむしろ減っているのが現状です。年収300~400万円は決して貧困層ではありませんが、子どもが何人かいて大学に行かせようと思うと家計はかなり厳しくなります。豊かさの実感がないのは当然でしょう。