喜一郎の人生はまさに曲がりくねった道を行くがごとくであった。けっして彼は目的に向かってまっしぐらに邁進できたわけではない。しかし、後から振り返ってみると、曲がりくねった道や回り道のような経路が、のちの自動車事業の創出・育成に意味があったかのように見えてくる。敬虔なキリスト教徒の英訳者スクリプチャック氏からすれば、喜一郎という人物は、神が与えた使命・目的を果たすべく「曲線で描いた直線」を真摯に突き進んだ、といった風に見えたのではなかろうか。本人は大いに悩んでいたが、迂回していたように思っていても、それこそが使命を達する「まっすぐな道」だったのだと。 戦後日本の礎をつくった偉大な経営者の一人として喜一郎も評価されるようになったとはいえ、その足跡をたどってみると、目標に向かって一直線に邁進できたわけではない。彼の片言隻句や行動の一端を取り上げて示唆を得ようとするのではなく、おのれが置かれた状況の中で最善を尽くし、目の前の課題と格闘し続けた姿勢こそ学ぶべきではなかろうか。みずからの使命をまっとうする「まっすぐな道」を切り開いていくためにも。
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置かれた状況で最善を尽くす
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