メーカーの採用力・日本精工Photo:kyodonews

「機械産業のコメ」とも呼ばれるベアリングの最大手である日本精工が管理職向けに新人事制度を導入した。その制度設計は、「課長ランクでも部長ポストに抜てき」できるという“超柔軟”な仕組みとなっている。一体どのようなものなのか。連載『メーカーの採用力』の本稿では、日本精工の新人事制度のカラクリを解剖する。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

一般的な人事制度改革とは一線を画す日本精工
製造業ならではの問題意識とは?

 日本精工が、25年ぶりに人事制度を改定した。

 日本精工は、ベアリング(軸受け)の国内シェア1位、世界シェアでも3位を誇る。ベアリングは自動車や産業機械内で、回転を円滑にする役割から「機械産業のコメ」と呼ばれる。

 そんな日本精工が、2024年7月に管理職向けに新人事制度を導入した。1999年以来の人事制度大改定となる。

 一般的に、製造業の管理職向けの人事制度改定では、年功序列的な要素を撤廃し、役職に応じておおよその給与や年収が決まるようにするケースが多い。ヤマハ発動機が24年に導入した新人事制度の例がその典型だ(詳細は、本連載『ヤマハ発動機が「飛び級で年収500万円増」の給与制度を始動!降格も普通にあるメリハリ人事システムを大解剖』参照)。

 しかし、日本精工の新制度は、こうした制度と一線を画している。新制度では、「課長ランクでも部長ポストに抜てき」といったことが可能だという。一見、製造業のトレンドに逆行するような取り組みにも見える。

 日本精工はどのような問題意識を持って、新制度を設計したのだろうか。

 次ページ以降では、日本精工幹部への直撃取材と共に、新制度のカラクリを大公開する。一方、「新制度導入以降の課題」も浮き上がってきた。一体何か。

図表:日本精工の管理職向け等級制度の新旧比較