学童代わりに塾に入れる
共働き家庭が「学童代わりにもなる」と中学受験の塾に子どもを入れるのが主流になってきています。小学4年以降は学童がないところもありますし、仮に小学6年まで学童があっても、高学年になると学童には行きたくなくなることも多いようです。だからといって子どもだけで家にいると、ゲームばかりやってしまう。じゃあどうしようと思った時に、塾に入れようということになるわけです。
塾ならば、小学生の扱いに慣れたプロである講師たちが見守ってくれるので安心です。また現在、公立小学校では英語や探究学習が入ってきたために「読み書き計算」がマスターできていない児童も増えています。ですから中学受験の塾でしっかり勉強をして、基礎学力を身に付けさせたいと考える保護者が増えてきているわけです。
今、早稲田アカデミーやenaといった大手塾が校舎を増やしていますが、その理由としては、送り迎えができない保護者が増えているので、子ども一人でも通える「近所の塾」に通わせたい保護者が多いからです。たしかに近所の塾ならば、授業がない日も自習室で勉強ができますし、その自習室も講師やスタッフがちゃんと管理しています。
日能研では自習室で生徒たちがふざけ出すと、放送で注意されることもあったそうです。カメラでしっかりと生徒たちの様子を見守っているわけです。
こうした事情から、大きな街にある大手塾の大規模校舎よりも、家の近所にある小規模校舎を選ぶケースもしばしば見受けられます。
近所の塾は、同じ小学校の子が多い
しかしながら、近所の塾にはデメリットもあります。
近くの塾に通う場合のデメリット、それは同じ小学校の子が多いことに抵抗感がある保護者や生徒がいるからです。ある保護者は長女を家の近所の塾に入れましたが、結果、塾でどのクラスにいるのか、どの中学を受験するのかが小学校で知れ渡ってしまいました。長女は最上位クラスにいて難関女子校を志望していましたが、そのことを小学校でからかわれてつらい思いをしたそうです。
女の子ですと、こういったことになることを想定し、小学3年の入塾段階で自ら「同じ小学校の子がいない塾がいい」と、電車に乗って大きな街の塾に通うことを希望する場合もあります。池袋の早稲田アカデミーに通っている女子も、「近所の校舎は同じ小学校の子がいるからいやだ」と言っていました。
そういったことも加味して、近所の塾か、電車やバスに乗って規模の大きな校舎に行くかを決める必要があるでしょう。
大手塾は校舎によって差がある
もう一点、校舎が多い大手塾は校舎によって当たり外れがあります。大手塾Aの生徒の保護者たちにインタビューをしていても、旗艦校と呼ばれる大規模校舎は生徒が多いのに一人ひとりをしっかりと見てくれて、生徒と保護者のケアをしてくれたそうです。その校舎はほかの保護者を取材しても満足度が高く、「神校舎」であることがわかりました。
ちなみに大手塾Aの中でもその校舎は、模試の平均点がトップクラスだそうです。一方、同じ大手塾Aの中でも「いじめがあった時の対応がひどかった。校舎長に相談しても無視された」という校舎もあります。
つまり、同じ塾でも校舎によって差があるということです。家の近所の校舎が「外れ校舎」である場合も考えられます。地元であればその校舎の評判も耳に入ってくるかと思うので、それらを吟味して選びましょう。
クラス数が多いことのメリット
もう一つは大規模校舎と小規模校舎の違いです。家の近所の小規模校舎か、電車やバスに乗って大きな街(自由が丘や吉祥寺など)の大規模校舎に通うかという選択も出てきます。
大規模校舎のメリットは、クラスが多くなるので、1クラス中の生徒の学力差が小さくなります。ある大規模校舎の学力真ん中のクラスは、偏差値が51〜55。授業は上位2割に合わせて行われるといわれますが、このクラスの場合は偏差値の差が4しかないので、偏差値51の生徒がついていけないということはありません。
一方で小規模校舎はクラスが2つということもあります。そうなると、偏差値53と65の生徒が同じ授業を受けることになります。この場合、さすがに偏差値65には合わせられないので、中位層の偏差値58〜60ぐらいに合わせた授業をします。そうすると、偏差値53の子には難しすぎますし、偏差値65の子には物足りなくなります。
大体3クラスに分かれると、「ついていけない生徒」が出てこないとされています。小規模校舎でも3クラスに分かれていれば、まず「自分の学力に合った授業」が受けられるでしょう。
ある小学校教諭は自分の子どもの塾選びで、近くの塾の校舎に電話をかけまくってクラス数を質問し、もっともクラス数が多い塾を選んだそうです。
※ 偏差値は四谷大塚のもの。
小規模校舎のメリットはアットホーム
では、クラス数が多い大規模校舎のデメリットはなんでしょうか。
大規模校舎のデメリットは、生徒と講師の距離が近くないことです。ある大手塾の校舎長が言いました。「うちの校舎長は生徒の名前と顔を覚えないといけないんですが、250人が限界ですね」と。1学年で100人の生徒がいたら、小学4年から小学5年までで300人です。それに低学年も含めると、全員の顔と名前は決して把握できません。
一方で小規模校舎の場合、1学年が20人程度なら、校舎長も講師も生徒全員の名前と顔、そして性格や得意・不得意をわかっています。三者面談でも「息子さんみたいにおとなしい子は、男子校のほうが絶対に向いていますよ」といった、その子の性格を知った上でのアドバイスができます。
ある男子生徒は、最初は自由が丘の大規模校舎に通っていましたが、長時間の通塾がキツくなり、近所の小規模校舎に移りました。「授業の内容がちょっと簡単になったなと感じた」のは不満でした。一方で、講師との距離は近くなり、校舎長が声をかけてくれて冗談を言い合ったり、クラスが固定されるので友だちができたりと、楽しく過ごせたそうです。
「大規模校舎は質問をするにも行列に並ばなきゃだけど、小規模校舎だと生徒数が少ないから並ばなくていいのが楽でした。仮に行列ができても友だちとしゃべっていればいいから、イライラすることもなかったです」と男子生徒は振り返りました。
一概には言えませんが、総じて大規模校舎は授業の効率がよく、小規模校舎はアットホームということになります。
近所の塾か、少し遠くの大きな塾か。大規模校舎か小規模校舎か。何を優先するかを考えてから塾を選べば、後から後悔することは少なくなります。小学生の後半の3年間を過ごす大切な場所です。学校選びと同様に、吟味して選んでほしいと切に思います。