高校生が大学受験のための塾を選ぶ際のポイント

 どの塾・予備校が自分に合っているか、次の8つのポイントを踏まえて考えてみてください。

授業形式|集団授業か、個別指導か、映像授業か

 塾・予備校の授業形式には、大きく分けて集団授業、個別指導、映像授業(自立学習)の3つがあります。

 集団授業は、大手塾・大手予備校の実力派講師陣による講義を受けられるのがメリットです。志望校合格のためのノウハウが詰まったカリキュラムや授業を受けることで、志望校合格に必要な学力を養うことができます。

 個別指導は、生徒個人の学力に応じてカリキュラムを編成できるのがメリットです。「苦手科目を克服したい」「評定を上げるために学校の定期テスト対策をしたい」場合には、個別指導が適しています。

 映像授業(自立学習)は授業時間を選ばず、生徒個人に合ったペースで学習を進められるのがメリットです。映像授業は、学習スケジュールや学習内容に対するコーチングとセットになっていることが多く、学習習慣を確立して学びたい生徒に向いています。

サポート体制|志望校別コースやチューター制度、面談等があるか

 サポート体制が整っていることも、塾を選ぶ大切なポイントです。

 例えば、これから志望校を決める生徒の場合、受験戦略に詳しい講師や教室長に進路相談できると安心です。生徒の志望校と得意・不得意分野から受験戦略を立て、オーダーメイドのカリキュラムを組んでくれるようなサポートがあればなおよいでしょう。

 また、志望校別対策のコースがあるのも重要です。「東大・京大コース」「早慶コース」といった偏差値帯に応じたコースより、「東大コース」「早稲田コース」など各大学に応じた対策のほうが、より志望校に特化して効率的に学習できます。

 さらに、自習室にチューターが常駐していて、いつでも質問できる体制が整っているなど、サポート体制が充実している塾・予備校を選ぶようにしましょう。

講師|プロ講師か、大学生のバイト講師か

 集団指導塾ではプロ講師が多く、個別指導塾では学生講師が多い傾向にあります。

 プロ講師は学習指導はもちろん、生徒のモチベーション管理や学習カリキュラムの策定・見直しなど、さまざまな面でのサポートを期待できます。また、進路指導や受験戦略などの受験情報に詳しいのもメリットです。

 大学生のバイト講師は、プロ講師に比べて授業料が安い傾向にあります。また、生徒と年齢が近いため、大学受験のロールモデルとしても効果を発揮します。志望校と同じ大学に通う講師がいると、生徒のモチベーション向上にも役立つでしょう。

合格実績|志望大学への合格実績は豊富か

 塾・予備校の合格実績も確認しておきましょう。志望大学への合格実績が豊富にあると、その大学への合格のノウハウがある塾・予備校だと判断できます。例えば、単年や1人だけではなく、毎年複数人の合格者を輩出しているような塾だと安心できるでしょう。

 特に、大手の東進ハイスクールや河合塾のような生徒数が多い塾・予備校だと、過去に在籍した生徒のデータも豊富に有しているため、それらのデータを活用した進路指導や受験情報を手に入れられるメリットがあります。講師や教室長も大学の受験戦略に精通していることが多いので、必要なサポートを受けられるでしょう。

費用|授業料や講習費が予算内に収まるか

 大学受験のための授業料や諸費用は、小学生や中学生と比べると高い傾向にあります。また、国公立を受験する場合は受験科目数が多いため、すべての科目の授業を受けるとなるとかなり高額になる可能性があります。また、医学部受験専用のコースだと、さらに料金が上がることもあります。

 公式サイトや請求した資料を見ただけでは料金の詳細がわからないことが多いため、直接、教室や校舎に足を運んで、料金の見積もりを出してもらうのがおすすめです。料金については、次の費用を確認してください。

授業料

 どの教科を何コマ取ると、年間でどれくらいの費用がかかるのかを確認しましょう。これまでに、同じ偏差値帯の生徒が同じ志望校を目指した場合、どの程度の料金がかかったのか、モデルケースを提示してもらえると見通しが立てやすいと思います。

諸経費

 塾・予備校では設備費、教材費、講師指名料など、さまざまな名目で費用がかかることがあります。授業料が安くても、諸経費を含めると割高になる可能性もあるので注意しましょう。

入会金(入塾金・入学金)

 入会金が0円の塾・予備校がある一方で、10万円もする塾・予備校もあります。特に予備校は入会金が高い傾向にありますが、入会金が減額されたり無料になったりするキャンペーンを行っていることもあるのでチェックしてみましょう。

講習費

 季節講習や志望校別の特別講習などの料金も確認しましょう。特に夏期講習や冬期講習では多くの講座を勧められて、すべてを受講すると多額の費用がかかることがあります。個別指導教室では、季節講習がない代わりにコマ数を増やして授業時間を確保することもあります。

入試方法|一般選抜か総合型選抜か学校推薦型選抜か

 大学受験には、大きく分けて「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」の3種類があります。

「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」を利用する場合は、小論文や面接などの対策も必要になるため、これらの対策ができる塾・予備校を選ぶようにしましょう。また、推薦を受けるためには一定以上の評定平均が必要なこともあるので、定期テスト対策が充実している塾・予備校を選ぶことも大切です。

「一般選抜」でも、国公立受験か私立受験かで受験戦略はまったく異なります。特に医学部受験では、よりハイレベルな学力が求められます。

 利用する入試方法に適したプランを提供している塾・予備校を選びましょう。

受講科目|受講できる科目は何か

 一部の個別指導塾では「英語・数学・国語のみ」など、受講できる科目が限られている場合があります。志望校の受験に必要な科目が受講できるかどうかを確認しておきましょう。

 映像授業で自立学習するタイプの塾・予備校では、全教科受講できることが多くなっています。ただし、受験するレベルに合った映像授業かどうかを確認しておく必要があります。

カリキュラム|一人ひとりに応じたカリキュラムになっているか

 集団指導塾では、受験生全員が同じカリキュラムで学習を進めます。一方で、多くの個別指導塾では、一人ひとりに応じたオーダーメイドのカリキュラムで学習を進めることになります。

 集団指導塾のオリジナルカリキュラムでは、塾・予備校の知見を活かした志望校合格に最適なカリキュラムを提供しています。

大学受験塾に通うメリット・デメリット

大学受験塾に通うメリット

 大学受験塾に通うと、次のようなメリットがあります。

大学受験に特化したカリキュラムで勉強できる

 志望校別の対策や入試形態ごとの対策など、大学受験に特化したカリキュラムで学べるのがメリットです。通塾なしで受験する場合、自分で志望校の過去問から出題傾向を分析したり、受験に間に合うように学習プランを立てたりしないといけません。しかし、塾では志望校に合わせたカリキュラムを提供してくれるので、効率的に学習を進めることができます。

プロ講師による指導が受けられる

 指導力のある講師は、難しい学習内容もわかりやすく教えてくれます。そのため、勉強が苦手な生徒でも理解しやすい授業が受けられます。また、生徒の苦手を分析して、それに合わせた対策をしてくれるのもメリットです。さらに、入試で効率よく点数を取る方法や、大学ごとの出題傾向に即した対策の仕方なども教えてもらえます。

学習のサポート体制が整っている

 大学受験塾に通うことで、最新の受験情報を手に入れたり、モチベーション管理をしてくれたり、自習室を使えたりと、さまざまなサポートを受けられるのもメリットです。塾には豊富な過去問データや大学に関する情報があるので、受験戦略を立てる際に役立ちます。また、講師やカウンセラーが悩み事の相談に乗ってくれるので、モチベーションも維持しやすくなります。さらに、自習室が使えたり、チャットで質問ができたりと、充実したサポートが受けられます。

大学受験塾に通うデメリット

 一方で、大学受験塾に通うことにはデメリットもあります。

費用がかかる

 費用がかかる大学受験塾に通うと、年間で数十万円から高ければ数百万円の費用がかかります。特に医学部受験対策の塾は費用が高い傾向にあります。費用を抑えるためには、必要な講座だけ受講する、市販の参考書と併用して学習する、キャンペーンを利用するなどの工夫が必要です。

通塾に時間がかかる

 通塾に時間がかかる自宅学習と比較すると、塾に通うのに時間がかかる分、勉強時間を削ることになってしまいます。もし自宅と塾の往復にかかる時間を勉強に充てることができれば、年間でかなりの勉強時間を捻出できます。例えば、オンライン塾を活用したり、移動時間にできる勉強を見つけたりするなどして、勉強時間を確保するようにしましょう。

塾の進度やレベルが合わないことがある

 塾の進度やレベルが合わないことがある塾のカリキュラムが、自分の学習進度と合わないことがあります。例えば、苦手科目だと授業についていけなかったりする一方、得意科目だと授業進度が遅すぎたりすることが考えられます。特に集団塾の場合、演習量を増やしたい既卒生も授業を受け直すことがあるため、授業の進度や自分の学力レベルが合っているかを確認することが大切です。

大学受験塾に通うべき生徒・通わなくてもよい生徒

大学受験塾に通うべき生徒

 大学受験塾に通うべきかどうか迷ったら、以下のチェックポイントに当てはまるかどうかを確認してみましょう。

志望校のレベルが高い生徒

 今の学力と志望校との差が大きい生徒は、大学受験塾で効率よく学習するべきです。特に国公立大学は受験科目が多い上に、二次試験では記述力や論述力も求められるため、高いレベルでの対策が必要になります。志望校に応じた戦略的な対策をするなら、受験を知り尽くしたプロに相談するのが有効です。

学習習慣が身についていない生徒

 塾に通うことで、学習のペース管理ができるようになります。例えば、家だと集中できない気分によってサボってしまうといった生徒でも、塾に通うことで勉強時間が確保できます。授業のない日にも自習室を利用すれば、集中できる環境を整えやすいでしょう。また、塾では講師やチューターが質問対応をしてくれるので、学習へのモチベーションが下がりにくいのもメリットです。

苦手な科目がある生徒

 特定の科目が苦手で、自力で苦手を克服するのが困難な生徒は、大学受験塾で対策をするべきです。大学受験塾では、苦手の原因を分析して基礎から丁寧に学び直すことができます。場合によっては学年をさかのぼって指導してくれるため、苦手の克服に効果的です。自力で参考書を読むだけでは理解が深まらないような生徒は、大学受験塾でしっかりと対策をしましょう。

大学受験塾に通わなくてもよい生徒

 大学受験塾に通うメリットは大きいものの、次のような生徒は通塾なしでも志望校合格を目指せます。

高望みをしない生徒

 高望みをしない生徒現時点での学力が志望校のレベルと同程度なら、塾に通わなくても合格は可能です。ただし、自分で参考書や問題集をやりきる力があったり、モチベーションを維持できたりすることが前提になります。高望みをしないからといって、油断をしていると足をすくわれかねません。定期的に模試を受けて志望校判定を確認するなどして、学力の維持・向上に努めましょう。

学習管理ができる生徒

学習管理ができる生徒自分で学習計画を立てて確実に実行できる意志の強い生徒は、塾に通わなくても大丈夫です。学習の優先順位を考えながら毎日の勉強時間を確保し、必要に応じて学習計画を修正するなど、志望校合格に向けて努力を重ねましょう。学習計画が適切かどうかを客観的に判断してくれる人が身近にいると、より安心です。

参考書や映像授業を使いこなせる生徒

 参考書や映像授業を使いこなせる生徒市販の参考書や映像授業(低価格の学習アプリやオンライン講座)などで効率よく学習できる生徒は、塾に通う必要があまりありません。ただし、わからないことを自分で調べたり、学習が身についているかを定期的にチェックしたりする必要がある点に注意しましょう。

大学受験塾の料金・費用相場

集団塾の相場

 集団塾の相場は、年間で50万円から80万円です。毎月の授業料が25,000円〜40,000円程度かかる他に、入会金、季節講習費、教材費、テスト代などの費用がかかります。集団塾では「東大コース」「早慶コース」などのように、複数教科をまとめて受講できるコースがあると、単科受講よりもお得に受講できることがあります。

個別指導塾の相場

 個別指導塾は、集団塾に比べて費用が高くなりがちです。年間で60万円〜100万円かかることもあります。個別指導塾は一般的に1対1の授業だと料金が高く、1対2〜の授業は料金が低くなります。また、個別指導塾で季節講習を受講する場合は、単にコマ数を増やした分だけ料金がかかることが多く、季節講習だけでも高額になることがあるので注意しましょう。

大学受験のための塾・予備校に関するよくある質問

 大学受験を目的とした塾・予備校に関する「よくある質問」をまとめていますので、参考にしてください。

大学受験のためにいつ頃から塾に通うべき?

 できるだけ早くから通うのが望ましいでしょう。

 例えば、学校推薦型選抜を利用する場合は、評定を上げるために高1からよい成績を取る必要があります。一般選抜を利用する場合でも、苦手や弱点を作らないように、地道な努力を続ける必要があります。

 また、中高一貫校生などは、中学生のうちから難関大学に合格するための勉強を始めていることがあります。そのような生徒と競い合うことを想定すると、塾・予備校のスタートは早いに越したことはありません。

入塾前に無料体験授業は受けるべき?

 複数の塾・予備校の無料体験授業を受けるようにしましょう。

 無料の体験授業を受ける際には、学力のカウンセリングを受けたり、塾の特色について説明をしてもらえたりします。また、生徒自身が教室や講師の雰囲気を肌で感じることもできます。

 塾をコロコロ変えるのは、指導の一貫性を保てませんし、費用もかかるのでお勧めできません。保護者も生徒も十分に納得した上で入塾できるように、体験授業は必ず受けておきましょう。

費用や授業料の相場はどれくらい?

 大学受験の塾・予備校の年間にかかる費用相場は、50万円から100万円程度です。

 ただし、塾・予備校にかかる費用や授業料は、授業形態、受講する講座数、季節講習の有無、オプションの内容などによってさまざまです。また、医学部受験専門の塾・予備校に通う場合は、200万円から500万円と高額になることもあるため注意が必要です。無料体験や入塾相談に行った際に、年間にかかる費用の見積もりを出してもらうようにしましょう。

大学受験に向けて、塾には週何回くらい通うべき?

 生徒の学年と受験する大学・学部の試験科目数によって異なります。

 例えば、部活動が忙しい高1生の場合、学習習慣をつけるために週1回だけでも通うとよいでしょう。一方で、国公立を受験する高3生の場合は、複数科目の授業を受けたり、勉強量を確保したりするために、週3回くらいは塾に通うべきです。特に自宅では集中できない生徒は、できるだけ塾・予備校の自習室に通って、集中して学習できる環境に身を置くようにしましょう。

塾に通わずに大学受験は乗り切れる?

 塾に通わずに大学受験を乗り切るのは非常に困難です。

 塾・予備校に通わない場合、合格から逆算したカリキュラムの作成、各教科の学習、受験戦略の立案、志望校対策、学習のモチベーション管理などをすべて自身で行わなければなりません。しかし、塾・予備校に通えば、大学受験に精通した講師や教室長が、入試に必要なサポートをしてくれます。

「勉強の仕方がわからない」「まだ届いていない偏差値の大学に受かりたい」「独学で受験を乗り切れるか心配」などの場合は、塾・予備校に通って効率的に学習を進めるべきでしょう。

まとめ|高校生の大学受験におすすめの塾

 大学受験で希望の大学・学部に合格するためには、塾・予備校に通うことが必須と言っても過言ではありません。

 塾・予備校にはそれぞれに強みがありますので、しっかりと比較・検討した上で、生徒に適した塾に入ることが大切です。本記事を参考に、志望校の合格まで並走してもらえる最大のパートナーである塾・予備校を選んでください。

監修:鈴木孝一氏のワンポイントアドバイス

 大学受験塾選びで気になるのは、やはり合格実績でしょう。しかし、大手塾だから、実績が多い塾だからと安易に決めてしまうのは危険です。

 合格実績が多いのは「生徒数が多い」のが一番の理由だからです。当然、合格実績に出てこない低偏差値大学の合格者や、不合格者も同様に「多い」のが現実です。

 ご自身と同様の状況の生徒が、どういう大学に合格した実績があるのか、というのを大手塾では特に確認されることをオススメします。