過去問を解く際の注意点
まずは、過去問を解く際の注意点について解説していきます。これから過去問に取り組もうと思っている方は参考にしてみてください。
①志望校の出題傾向を知り、自分に足りない部分を認識する
志望校の過去問を研究すると、その学校の出題傾向がわかります。「今までどんな問題が出題されてきたのか」「出題されやすい単元は何か」「難易度はどれくらいか」といったことが、見えてくるわけです。
こうした出題傾向と、自分の得意分野・苦手分野とを重ね合わせると、入試で問われることと自分の力との差が明らかになります。この差こそが、自分に足りない部分です。そしてこの差を埋めることが、自分にとって本当に必要な対策となります。
②時間配分を知って、試験時間の使い方を覚える
過去問演習では、志望校ごとの時間配分をつかむことも重要です。学校によっては、科目によって試験時間が異なることがあります。そのため、各科目の試験時間が何分なのかを過去問演習で押さえておきましょう。
「時間内でどのくらいの問題を解く必要があるのか」を感覚的につかむためにも、時間の把握は大切です。
問題を解く順番や時間配分についても、学校ごとに対策を立てる必要があります。ノープランで受験した場合、時間配分がわからず難間に時間をかけ過ぎ、解ける問題も残してしまうかも知れません。こうした事態を避けるためにも、過去問演習を通して学校ごとの時間配分をつかむようにしましょう。
③解答用紙の形式を知って、問われることを大まかにつかむ
過去問演習では、解答用紙の形式を科目ごとに把握しておきましょう。解答用紙の形式は、学校によって違いがあるのが普通です。
例えば算数の解答用紙であれば、「答えの数字だけを解答用紙に記入すればよいのか」「答えまでの途中経過を式などで記述する必要があるのか」といった違いがあります。
国語であれば、「記述式の出題はあるか」「字数はどのくらいか」「字数制限はあるか」「条件付き記述なのか」などです。
理科や社会では、学校によってはかなりの字数の記述問題が出題されるなど、バリエーションがあります。こうした違いは、過去問演習を行うことで知ることができます。事前に違いを知り、対策を立てておきましょう。
④配点を知って、「あと1点」にこだわる意識を身につける
志望校の配点が公開されている場合は、「配点の高い問題はどれか」「1問あたりのおおよその点数はどれくらいか」などについても、過去問演習で押さえておくとよいでしょう。
試験時間と配点の両方をつかんでおけば、「優先的に時間をかけて解くべき問題」と「後回しにするべき問題」が区別でき、また「何問間中何問間得点できればよさそうか」といったことも判断できます。
また、毎回の演習で配点を確認すると、1点1点を慎重に扱う意識も強くなります。「1点」へのこだわりが身につけば、合格発表後の得点公開で「あと1点で合格だった。漢字1つを書ければ合格していた」と後悔することも、きっとありません。
⑤小5年生以下は小6年生のGWまでの単元学習完了をめざそう
小5年生以下も、過去問演習に向けた取り組みを行うことができます。
小5年生以下は、時間のある今のうちに小6年生までに習うすべての単元学習をどんどん進めていきましょう。小6年生のGWまでに単元学習を終わらせて、小6年生の夏からは過去問演習をスムーズに始められるようにしてください。
また効果的に受験対策を進めるためには、早めに受験校を決めることも大切です。時間のあるうちに学校見学やオンライン相談会などにも参加して、第1志望校はもちろん、併願校も決めておくようにしましょう。
上記は開成中志望の小6年生の例になりますので参考にしてみてください。
過去問あるある質問
次に過去問に関するよくある質問についてまとめていきます。過去問の取り組み方について疑問があるという方はこちらを参考にしてみてください。
【Q1 過去問は、何年分を解けばいいですか?】
国語・算数の過去問については、第1志望校で5~10年分、第2志望校や第3志望校はその半分くらいが目安でしょう。理科・社会については、時事問題が多く出題されるため直近3年から5年程度が目安であり、古い年度まで解く必要はありません。
【Q2 過去問はいつから始めたらいいですか?】
遅くても、9月には始めるようにしてください。過去問演習は、第1志望校だけでも約2カ月はかかるでしょう。併願校の過去問もこなすと、さらに約3カ月かかります。合計すると、約5カ月は過去問演習に必要なのです。
1月に入ると千葉県・埼玉県の入試が始まるので、時間がとりにくくなります。ですので、何とか9月には始めておきたいところです。
【Q3 1週間で過去問を解くペースは、どれくらいがいいですか?】
1週間だと、1年度分が適当です。多くても、2年度分が限界でしょう。1科目の過去問を解く際の目安時間は、「問題を解くのに60分」「採点で30分」「解き直しで60分」であり、合計の所要時間は2~3時間になります。
このペースで1日1科目の過去問を解いた場合、4科目を解くのには4日間かかるわけです。ですので、1週間に解くのは1年度分、多くて2年度分ということになります。
【Q4 点が取れない時は、どうしたらいいですか?】
学習を始めたばかりの頃は合格最低点にまったく届かない場合もあるかも知れませんが、焦る必要はありません。
中学入試では、7割がおおよその合格の目安とされています。11月・12月の時点でこの7割をとれるようラストスパートをかけますので、諦めずに続けることが大切です。
過去問の正しい進め方
ここからは、過去問演習を進めるにあたっての注意点や手順について、詳しく紹介します。正しい手順で無駄なく進めることが、難関校合格のカギです。
過去問の正しい進め方・その1「準備する」
何事も、始める前には準備が大切です。夏休み前までには、最新年度の市販の過去問集をそろえておきましょう。
解答用紙には、本番と同じサイズでとったコピーを使ってください。記述の枠の使い方や字の大きさなどを、本番と同じ形で学ぶことができます。
過去問の正しい進め方・その2「時間を計って解く/字を丁寧に書く/空欄を作らない」
過去問を実際に解く時は、時間/字/空欄について特に注意してください。過去問演習は、自宅であっても必ず時間を計って取り組みましょう。
一度スタートしたら、あとは本番の入試と同様、中断せずに取り組んでください。解答が早く終わった場合も、すぐに切り上げてはいけません。残り時間をフルに活かし、1点でも多く得点する姿勢を、普段から身につけることが大切です。
字を丁寧に書くことも、普段から心がけましょう。採点者が読めなければ、内容が正解でも得点はもらえません。また雑な字は、自分自身も読み間違えてしまうため、ミスの原因になります。
空欄を作らないことも、入試ではとても重要です。演習の時から空欄を残さないようにして、何か書くという姿勢を身につけておくべきです。時間/字/空欄については、「入試直前になったら気をつけよう」と考えず、今の段階から意識して正しい解き方を体で覚えておきましょう。
過去問の正しい進め方・その3「採点する」
過去問を解いたら、まずは自分で採点してみましょう。採点の基準は、かなり厳しめにしてみてください。あいまいな内容や雑で読めない字、小さな字などは、すべて不正解で構いません。
自由記述の問題などで自己採点が難しい場合は、先生に答案や採点を確認してもらいましょう。
過去問の正しい進め方・その4「解き直す」
過去問の採点が終わったら、次は解き直しです。間違えた問題は放置せず、解説をよく読んで解き直しましょう。解き直しにより、正解までの考え方に納得することが、実力につながります。
それでもあまりに難しい問題の場合は、ほとんどの受験生が解けない「捨て問」かも知れません。
過去問の正しい進め方・その5「先生に提出する」
解き直しまで終わった過去問は、答案や取り組み方について先生にチェックしてもらいましょう。
塾によっては必要に応じて授業で解説を行い、また一人ひとりの弱点や個性をふまえて具体的なアドバイスを行います。アドバイスをもとに、次の年度科目に取り組みましょう。(あとで振り返りができるよう、「過去間ノート」を作っておくことをおすすめします)
採点答案実例
実際の受験生の採点答案を紹介します。採点/減点のポイントを、答案から見ていきましょう。
国語の採点のポイント
漢字は特に、丁寧に書きましょう。あいまいな字は不正解になります。
トメハネハライは、正しく書くようにしましょう。それ以外にも注意点があります。「口」は手を抜いて「○」と書いている受験生がイますが、入試では不正解になることがあります。
「師」の漢字の場合、一画目の「ノ」と二画目「┃」をくっつけて書く受験生がいますが、これも不正解と採点される場合があるのです。
解答欄からはみ出ないよう書くことも、大切です。
算数の採点のポイント
思考の途中過程は、誰が見てもわかるようにはっきりと書きましょう。
思考の過程が採点官に伝わりやすい、良い答案です。計算過程や思考過程について、部分点を与えている学校もありますので、思考過程は省略せずに、きちっと書きましょう。
何をどのような順番で考えたのかが、わかりにくくなっています。せっかく答えがあっていても、部分点をもらえないかもしれません。
社会の採点のポイント
用語は、普段から「漢字」で「正確に」覚えるようにしましょう。漢字そのものが正しく書けるかどうかも、確認しておく必要があります。
「租」は小学生の国語では習わない漢字ですが、漢字で書くことが要求される場合もあるので注意が必要です。
理科の採点のポイント
「わかったつもり」には、要注意です。図や写真なども、しっかり確認するようにしましょう。
ここでは、水上置換法の図示が求められています。正しく図示できるでしょうか。
「なんとなくわかる」というだけでは、得点にはつながりません。明快なイメージを持つと同時に、具体的な図示の方法も覚えておきましょう。
この問題の場合、使用する器具の名称、器具の配置をきちんと図示する必要があります。最後に集気びんを取り出すときに必要な「集気ビンのふた」も忘れないように書きましょう。
過去問を解く上でのポイントまとめ
今のうちから正しく書く習慣づけをつけましょう。実際の答案を見て、「思ったよりも厳しく採点されるんだ・・・」と感じた人もいるかも知れません。
減点につながる悪い習慣は、入試の直前になってからでは治りません。ぜひとも今のうちから高い意識を持って過去問演習に取り組み、正しく解答を書く習慣を身につけてください。