そもそも高校受験の塾はいつから通うべきなの?

 高校受験に向けて、小学6年生の3月頃から塾に通う生徒もいますし、中学3年生から通い始める生徒もいます。高校受験の塾に通うのは、当然志望校に合格するという目標を達成するためですが、志望校や合格までの過程は一人ひとり違います。そのため、いつから塾に通わせるべきかは、志望校や通塾の目的によって異なります。

難関校を志望するなら早めに通うべき

 難関校に合格するためには、早めに受験に備えることが大切です。

 公立の難関高校に合格するためには、学力検査と内申点の両方で高得点を取る必要があります。

 一方で、私立の難関高校を一般受験する場合は、内申点はあまり重要ではありませんが、試験できちんと得点することが必要です。そのため、私立の難関校を受験する場合も、早めに塾に通い、中学3年生までの学習範囲を終わらせて、演習や過去問対策に時間をかけることが大切になってきます。さらに、最新の入試情報を手に入れたり、客観的に学力を把握したり、入試へのモチベーションを高めたりするためにも、通塾は必須と言っても過言ではありません。なお、私立高校の推薦入試を利用する場合は、内申点が重要になってきます。

 難関校を志望している場合、受験のノウハウを持っている塾に通って効率的に学習を進めていくことが、合格への近道と言えます。トップ校を目指す子は小学生や中学1年生のうちから通塾を始めていることもありますので、スタートで出遅れないようにするためにも、早めに塾に通うべきでしょう。

内申点を高くするには早めの方が良い

 高校受験では、内申点(調査書点)が入試の合否を大きく左右します。内申点は、主に中学校の定期テストの結果と授業や課題に対する取り組み状況によって成績が決まります。定期テストでよい点を取らないと、内申点で高い点数を取ることができないため、内申点を高くするには早めに定期テスト対策を得意とする塾に通い、定期テスト対策をするのがよいでしょう。

 内申点の出し方は、地域や学校によって異なっており、例えば以下のようになっています。

  • 東京都、愛知県など:中学3年生だけの内申点を入試に反映する
  • 神奈川県、富山県など:中学2年生と中学3年生の2年分の内申点を入試に反映する
  • 大阪府、埼玉県など:中学1年生から中学3年生までの3年分の内申点を入試に反映する

 また、私立高校入試では、推薦入試で内申点の基準を設けている学校もあるため、推薦入試を考えている場合も内申点が非常に重要になります。内申点は後からではどうにもならないため、早めの対策が必須です。

 内申点の換算の仕方も地域や学校によって異なります。ここでは、都立高校を例にとって内申点について解説します。都立高校の場合、学力検査に基づく入試では、内申点を以下のように計算します。

学力検査の教科 内申点
5教科(国・数・英・社・理) (国+数+英+社+理)+(音+美+保体+技家)×2=65点満点
3教科(国・数・英) (国+数+英)+(社+理+音+美+保体+技家)×2=75点満点

 これをもとに、学力検査の満点1000点(※1)に照らし合わせて点数が計算されます。学力検査と内申点の比率が、7対3に設定されている場合、「内申点×300÷満点」で内申点を換算します。

 例えば、学力検査が5教科で、内申点がオール4の場合、「52×300÷65=240」になり、換算後の内申点が240点になります。もし内申点がオール3なら、「39×300÷65=180」になり、オール4の受験者に比べて60点分の差がつくことになります。

 このように、内申点を上げておくと受験で有利になることがあるため、早めに通塾して中学校の成績を高く保つのもひとつの受験戦略です。

※1 令和5年度入試から、中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の20点が加算され、1020点満点になります。

中学校での勉強で学力が十分なら遅めでも良い

 遅めに通っても大丈夫な子どもの条件は、「中学校の成績がよいこと」と「実力テストや模試を受けても好成績を収められること」です。

 前述のように、内申点は入試において非常に重要なポイントですし、難関校を志望する場合は早めの対策が必要です。一方で、中学校の成績がよくて、学力が十分身に付いているなら必ずしも早めに通塾する必要はないでしょう。

 ただし、内申点がよいからと言って、学力が高いとは限りません。中学校の定期テストは、決められた出題範囲で、授業中に学習している内容が出題されるため、比較的点数が取りやすくなっています。一方で、実力テストや入試は出題範囲が広く、学校で習ったパターンとは異なった出題形式の場合もあります。

 そのため、「学校の成績はよい」という子でも、実力テストや模試を受けるとあまり点が取れないということも往々にしてあります。学力が十分身に付いているかどうかは、実力テストや模試の結果を見て確認する必要があります。

「実力テスト」と「模試」では、模試を受けた方がより客観的に学力状況を把握できます。学校ごとに行われる「実力テスト」は、「総合テスト」や「復習テスト」と呼ばれることもあり、入学時から実力テストを受ける時点までの全範囲が出題されます。そのため、これまでの学習がどの程度身に付いているかを判断するための材料としてはよいでしょう。しかし、学校の先生が作るために内容の偏りがあったり、校内の生徒のみが対象のテストのため受験者が少なかったりするという欠点があります。

 一方で、「模試」は受験に特化した内容で構成されていますし、受験者が多いためより客観性が高い結果を得ることができます。模試では志望校判定が出るため、全体の中での自分の位置も把握しやすいです。

 例えば、難関校を志望している場合に受験する模試としては、駿台中学生テストが有名です。駿台中学生テストは全国規模の模試で、難易度が高めに設定されています。そのため、ハイレベルな受験者の中で、自分はどれくらいの実力があるかを測る指標として有効です。

 実力テストや模試を受けた結果、好成績を収めることができていれば、遅めに塾を始めても大丈夫でしょう。基礎学力が十分に身に付いていれば、公立高校入試の共通問題(統一問題)による学力検査でも十分に得点することが見込めますし、遅めに通塾しても実力を伸ばしていくことが期待できます。

高校受験における塾のメリット

高校受験の相談に乗る先生
出典: pixta

 高校受験における塾のメリットはいろいろと考えられます。ここでは、「内申点対策」「志望校に合った入試対策」「受験勉強のモチベーション」の3つのメリットについて解説します。

内申点対策をしっかりと行ってくれる

 塾では、入試対策の他にも、内申点対策をしてくれるところもあります。特に、地域に密着している塾では、各学校や中学校の先生ごとに定期テストの過去問を持っていて、出題の傾向に合わせた対策をしてくれる塾もあります。

 当然のことながら、中学校では学習指導要領に準拠した授業を行っているため、中学校の定期テストの出題範囲が大幅に変わることはありません。また、学校の先生ごとに出題形式の傾向があったり、同じような問題が出題されたりすることもあります。地域密着の塾では、これまで入手した中学校の定期テスト(過去問)を活用して、定期テスト対策を行ってくれる塾があり、内申点対策に役立ちます。

 一方で、過去問に頼った定期テスト対策をしている場合、十分に実力が身に付かないこともあります。本来であれば、定期テストはそれまでの学習をどの程度理解できているかを測ったり、しっかりと学習を身に付けさせたりするために行われるものです。

 しかし、過去問に頼った対策をしていると、自分で計画を立てて学習をしたり、過去問の範囲外の学習が疎かになってしまったりする可能性があります。そのため、過去問だけに頼った定期テスト対策には十分気をつけましょう。

志望校に合った入試対策を行ってくれる

 志望校に合わせた入試対策ができるのも塾のメリットです。例えば、早稲田アカデミーの「必勝志望校別コース」では、開成高校、筑波大学附属駒場高校、国立高校などの対策に特化したコースと、早稲田、慶應、青山、中央などの対策に特化したコースがあります。他にも、都立や県立を目指す「都立・県立高校対策コース」などもあり、志望校合格に向けて効率よく学習することができます。

 大手塾の他にも、地域に密着した塾だと、地域の受験情報を多く持っていることが多く、生徒の学習状況や志望校に合わせた対策を行ってくれます。また、塾では最新の入試情報を入手することができるため、入試傾向の変化にも対応しやすいというメリットがあります。

同じ志望校を目指している生徒と会える

 塾に通うことで、同じ志望校を目指している生徒とも知り合うことができるため、モチベーションを高めやすいというメリットもあります。中学生にとって、受験に向かって一緒にがんばれる仲間がいるというのは、モチベーションを保つために有効です。

 また、塾内テストの結果を知ることで、自分の実力が把握しやすいのもメリットです。特に競争心が強い生徒だと、「友達よりも高い点数を取るために勉強をがんばろう」という気持ちを喚起させるのに効果的でしょう。