中学受験生を担当する個別指導の講師3人
Aさん:大手個別指導塾の元校舎長。現在は別の個別指導塾で非常勤講師。中学生と高校生の息子がいる。子供がオール公立で教育費が抑えられたのはよかった。
Bさん:大手個別指導塾大学生アルバイト講師。中学受験経験者。算数・理科担当。
Cさん:中小個別指導塾アルバイト講師。中学受験を経て、難関男子校出身。難関校を目指す生徒の指導をしている。
集団塾で苦戦する生徒を個別指導塾がサポート
司会:個別指導といっても塾によって内容は全部違うと思います。
Aさん:うちはマンツーマンが中心です。中学受験の集団塾のフォローが中心になります。宿題で分からない問題を教えています。
Bさん:うちは3対1が中心です。小学校の準拠ワークで勉強する子がいれば、『新小学問題集』『新演習』などのテキストで中学受験の対策をする生徒もいます。私は準拠ワークの指導が中心ですが、中学受験の指導もしています。算数と理科がみられる女性の講師ということで重宝されています。
Cさん:僕の勤務先は1対1と1対2ですね。中小塾で人手が足りないせいか、アルバイト講師の負担が大きくなりすぎていて、他に移るつもりです。
Aさん:それは中小塾だからじゃなくて校舎長の問題ですね。私が校舎長をやっていたときに他の校舎から移ってきたアルバイトの大学生が「前の校舎はブラックだったけれどここは違う」と言っていました。まずはアルバイトに続けてもらうのが校舎長の役割だと考えていたので、私が頑張っていました。
司会:じゃあ、Cさんは難関校を目指す子を見ているんですか?
Cさん:御三家を志望する生徒を中心に見ていますが、中堅校を狙う生徒も指導しています。僕は開成に不合格だったのでそこがセールスポイントとして弱い(笑)。
自由が丘に割と近い地区なので、SAPIXに通っている子が多かったです。アルバイトを始めるときに「うちはSAPIXの生徒のサポートで食べているから」みたいなことを言われました。でも、去年ぐらいから早稲田アカデミーの子が増えている感じですね。近所の早稲田アカデミーの校舎は生徒が増えているようです。
Aさん:うちもそうですね。早稲田アカデミーの生徒が増えていますが、テキストとして使っている「予習シリーズ」が難しいから宿題ができなくて個別指導に来ています。
※予習シリーズは四谷大塚が発行している中学受験対策のテキストで、多くの学習塾が採用している。
オーバースペックな集団塾から転塾するケース
Cさん:予習シリーズは御三家対策になっていますよね。
Bさん:そうですよね。予習シリーズを使う塾で「難しすぎて、ついていくのが無理だ!」となった子がうちに転塾してきますよ。
Aさん:SAPIXさんも基本、御三家対策の塾だと私は思いますけどね。SAPIXもいいテキストですよ。
Cさん:早稲田アカデミーやSAPIXは進度も速いし宿題も多いので通って苦労するのは当たり前なんですが、だからといって、進度がゆっくりである栄光ゼミナールや日能研に転塾はしないんですよね。そうしたほうがいいケースも多いのですが、それを僕ら個別指導の講師は言えない。
Aさん:そうですね。私たちは「今、通っている集団塾の宿題のフォローをしてくれ」と言われればそれをやるのが仕事ですから。
Cさん:SAPIXでうまくいかなくて、早稲田アカデミーに転塾する子もいますが、予習シリーズが難しいからまた手こずることになります。
Bさん:集団塾からうちに転塾してきた子が基礎からやり直したら偏差値が上がることはありますよ。集団塾はオーバースペックになりがちですよね。
Aさん:私は「集団塾を辞めてうちに全振りしてくれたら志望校に入れる」と思うし、実際、それを勧めることもあります。本人に合った内容で指導するから学力はMAXになるはず。ただ、マンツーマンだと費用は高くなりますから、無理な家庭も多いですね。
個別指導塾のみに通う「ゆる受験組」
司会:個別指導だけでやっている人たちもいるんですね。
Bさん:うちにくるのはいわゆる「ゆる受験組」ですね。偏差値45ぐらいの学校を受験するタイプです。2教科受験組もいます。
Aさん:偏差値45を狙うなら、栄光ゼミナールでもちょっとオーバースペックですものね。うちにもそういう生徒さんも来ますよ。
Bさん:女子校は沢山あるのでどこかに入れます。全部、残念な結果になっても二次募集みたいなのがあって、塾が学校に交渉して入学させることも。男子はそうもいかないからキツいですよね。
Cさん:塾が事前に学校に相談することもあると聞きます。「この生徒を受け入れてくれたら、学力が高い生徒たちも併願で受験させるから」と交渉しています。定員割れしている学校だとそういう形で入学する子もいるようですね。
Aさん:ええ、そうですね。それができるから女子は「全落ち」がないです。
中学受験より高校受験が向いている生徒も
Bさん:男子で正直、うちに来る子たちだとちょっと大変です。『新演習』が難しく感じるぐらいだと、受験できる学校がかなり限られてきてしまいます。
Cさん:この間、久しぶりに『新演習』を手に取りましたが、すごいボリュームアップしていませんか? 内容も難しくなっているし。
Aさん:正直、男子は「ゆる受験」が難しいんですよ。だいたい、中学受験で4教科を勉強するのはちょっと大変すぎますよね。私は自分の息子たちを中学受験させませんでした。
Cさん:男子に限っていうと発達がのんびりだと、「中学受験に向いていないのかな?」って感じることもありますよね。
Aさん:男子は中学生になってから発達するように思います。難関層の男子は高校受験の選択肢も多いですしね。公立中学でオール5を取れば推薦も受験できるし。
Bさん:女子もそう思う子多いですよ。私は公立中学の生徒も指導していますが、真面目でコツコツ努力できるなら公立中学でオール5を取れば推薦でMARCHの付属に進学することもありますし。
Cさん:この1年ぐらいで「中学受験から高校受験に切り替えること」を検討する親御さんも増えているんじゃないですか? そんな話も聞きます。
Bさん:うちでもいます。中学受験をやめて、高校受験に向けて英語をやり始める子がいます。
中学受験の過熱で通塾スタイルが変化
司会:一方で小学生の学力は格差が広がっていますよね。公立小学校で基礎学力が定着しなくなっているとも聞きます。
Bさん:はい、そうです。うちの塾に来るのは学力が伸び悩んでいる子も多いので痛感します。公立小学校に任せていられないので、低学年のうちから塾に通わせて基礎学力をつけようというケースが増えているのですが、そうなると「せっかく塾に通わせるなら中学受験を」となるんですよ。
うちに低学年から通っていた子が辞めて、中学受験の集団塾に通いだすことがあります。小学3年から中学受験塾に通うのが普通になっているから、うちは早くに生徒を取られてしまいます。
Aさん:小学3年の2月に中学受験塾に入った子たちが、「他の子は一年前から通っていてついていけない」とうちに来ることも増えています。従来、集団塾と個別指導塾を併用するのはSAPIX生がメインでしたが、今は他の塾も増えていますね。
Cさん:僕が中学受験をした頃は小学5年から中学受験塾に入ってくる生徒も多かったです。僕は小学4年の夏休みにゲームばっかりやっていたら、親が見かねて、近所の中学受験塾にぶち込んだって感じでした。それが今では小学3年からの通塾が普通になってきているんですよね。高校無償化で中学受験で私立に入学させたいという保護者も増えていますが、ちょっと今の中学受験は過熱しているのでどうかなと思います。
司会:小学3年から中学受験塾に通うとかなり塾代もかさみますね。今日は興味深いお話をありがとうございました。
座談会を終えて
中学受験の集団塾のテキストや授業の内容が難しくなっていることから、苦戦する生徒が増え、個別指導を頼るケースも多いことが分かった。小学3年からの塾通いが増えると、小学4年から始める生徒が戸惑うという話は中学受験の過熱を示しているように思えた。その中学受験の過熱で個別指導塾も活気づいているようだ。今後の中学受験の動向を注目したい。
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