親が管理する理由は子どもへの愛情と責任感

 話を始めるにあたり、まず菊池さんは、親がこれまで子どもを管理してきたからといって自分を責める必要はない、と伝えます。本当は穏やかな親でいたいのに管理してしまうのは、愛情や責任感があるためです。そこに、宿題や提出物、テスト、持ち物の準備など、環境からの要求が重なり、管理せざるを得ない力が自然と働きます。親は「将来困ってほしくない」「ちゃんとさせなければ」と考えるからこそ管理してしまうわけです。

人が自分から動くために必要な3つの要素

親が子どもを管理するという行為はこの3つを全部破壊する
子どもが自発的に勉強する方法とは?

 菊池さんは、自分から動く(自走する)子どもへと育つには、親が管理を手放すことだと述べます。その根拠として挙げるのが、心理学者によって提唱された「自己決定理論」です。この理論によると、人が自分から動くためには3つの欲求が満たされている必要があるとのこと。

 1つ目は、自分で選び、決めているという「自律性」です。すべてを他人に決められると、本人の意思は育ちにくくなります。2つ目は、自分はできると感じる「有能感」です。逆に、自分はできないと思うと、挑戦する前から諦めやすくなります。3つ目は、ありのままの自分を受け入れられているという「関係性」です。良い結果のときだけ認められ、失敗したときに否定される環境では、子どもは失敗を避けるようになります。

 そして、親が子どもを管理する行為は、この3つを全部破壊する、と菊池さんは指摘します。

外からの報酬や圧力は内側のやる気を失わせる

 菊池さんは、関連する研究として、1970年代に行われた実験も紹介。絵を描くことが好きな幼児を集め、3つのグループに分けて実施された実験です。事前に賞状という報酬を約束された1グループの子どもは、報酬がなくなると自分から絵を描かなくなりました。しかし、予告なしに賞状を受け取った2グループの子どもや、元々賞状がなかった3グループの子どもは、自由時間後も変わらず絵を描き続けました

 1つ目のグループのやる気が奪われたのは、アンダーマイニング効果のためだと菊池さんは話します。自発的な行動も外からの動機にすり替わることで、内からのやる気が失われてしまう、という現象のことです。

 菊池さんは、親の管理もまた、ご褒美と同様に外からの圧力として働く、と続けます。子ども自身が「上手になりたい」「良い点を取りたい」と思っていても、毎日指示されることで「親に言われたからやる」という感覚にすり替わってしまうのです。

管理を手放した方が子どもは長期的に伸びる

 中学受験塾という現場を25年見てきた菊池さんは、管理を手放した方が子どもは長期的には伸びる、と強調します。管理された子は、最初は言われて動いていても、最後には言われても動かない状態になっていく。一方、管理を手放した子は、最初は言われないから動かないけれども、失敗に学び、最後は言われなくても動くようになる、と説明します。そうした違いを毎年見てきたそうです。

 ただし、「手放す」を「放置」と誤解しないでほしい、とのこと。放置は無関心であり、手放すことは信頼口を出さずに見守り、失敗した際は一緒に考える、それが手放すということだと菊池さんはいいます。

 実際に、伸学会に4年生で転塾してきた子どもが、お母さんが管理を手放すことで大きく変わっていった例を紹介。最初は、クラスが下がったものの、後に自分から上のクラスを目指すと決め、最終的には希望する学校に合格したそうです。

親の不安を取り除くための4つの処方箋

親自身のための処方箋
親が管理を手放すにはどうすればいい?

 親が管理を手放すのに必要なのが、不安を少しずつでも取り除くことだと菊池さんは語ります。そして、親が自身の不安を取り除くための処方箋として、以下の4つを伝えます。

 1つ目は、管理した自分を責めないこと。口を出してしまった日も「不安だったんだ」「子どもが大切だから」と受け止めます。「また明日少しだけ手放すことに挑戦しよう」と自分に優しくすることが、子どもへの優しさにもつながります。

 2つ目は、子どもの良いところを意識的に探すこと。ランドセルを自分で片付けた、きょうだいに優しくしたなど、小さな成長に目を向け、子どもに伝えます。子どもの自信だけでなく、親の安心材料にもなり、自然と力が抜けます。

 3つ目は、1日1つだけ信頼する練習をすること。最初からすべて手放すのではなく、宿題を始める時間、お風呂に入る時間、翌日の準備など、1つだけは口を出さないと決めます。

 4つ目は、失敗させてもいいと覚悟を決めること。忘れ物や提出の遅れ、テストの悪い点など、たくさんの失敗は子どもを育てる材料となります。失敗から学べる子だと、子どもを信じることです。

まとめ

 今回は、親が手放すほど子どもは勝手に伸びるということを、信頼性の高い研究や自身の経験を挙げながら解説しました。最後にあらためて、管理を手放す勇気が子どもの自走力を育てる、と繰り返す菊池さん。自分や子どもを信じて、少しずつ手放していってください、と視聴する保護者に向けてメッセージを送っています。(次ページに解説動画あり)

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