来年の入試で、偏差値が12ポイント上がる中学

 東京家政学院中学校は、千代田区三番町にあり、落ち着いた環境の中で少人数制の手厚い指導が受けられる学校でしたが、偏差値という尺度では高い評価を受けている学校ではありませんでした。

 しかし、この系列校化が公表されると、状況は変わりました。ONETES株式会社(旧株式会社首都圏中学模試センター)の偏差値が2026年度結果偏差値(合格可能性80%。以後本原稿での偏差値はONETES株式会社の合格可能性80%を指します)では40でした。それが、同社「2027年中学入試予想偏差値(7月版)」では52へと、12ポイントも上がったのです。この現象は、系列校化による教育内容や進学実績への期待が、受験生・保護者の間で一気に高まったことを示していると考えられます。

【図1】法政大学付属校の偏差値推移

【図1】法政大学付属校の偏差値推移
ONETES株式会社 2008年~2026年中学入試結果偏差値一覧(合格率80%)をもとに東京個別指導学院が作成。グラフ中の2027年7月は「2027年中学入試予想偏差値(7月版)」によります。男女で偏差値が異なる学校は女子の偏差値を、入試回によって偏差値が異なる学校は、入試初日の一般的なコースの偏差値を採用しています。マーカーが付されていない年は、データ不足のため、算出できなかった年であり、判明年の前後を結んでいます。

今春開校の明大世田谷中は、偏差値で明大八王子を逆転

 同様の偏差値変動が、明治大学の系列校となり、2026年4月に校名変更と共学化した明治大学付属世田谷中学校(旧日本学園中学校)でもみられました。系列校化のプレスリリース(明治大学)が2022年4月の発表でした。このニュースの影響で、翌2023年度中学入試結果偏差値は60と、前年度入試の結果偏差値40から、わずか1年で20ポイントもアップし、人気校へ変貌したのです。その後も同校の難化は続き、首都圏の明治大学付属(系属校も含む)校の中でも、明治大学付属八王子中学校を抜き明治大学付属中野中学校と肩を並べるまでになりました。

【図2】明治大学付属校の偏差値推移

【図2】明治大学付属校の偏差値推移
ONETES株式会社 2008年~2026年中学入試結果偏差値一覧(合格率80%)をもとに東京個別指導学院が作成。グラフ中の2027年7月は「2027年中学入試予想偏差値(7月版)」によります。男女で偏差値が異なる学校は女子の偏差値を、入試回によって偏差値が異なる学校は、入試初日の一般的なコースの偏差値を採用しています。 マーカーが付されていない年は、データ不足のため、算出できなかった年であり、判明年の前後を結んでいます。

 明治大学付属世田谷中学校の場合、系列校化のプレスリリースの際に「卒業生のおよそ7割(約200名)以上が、本学へ推薦入学試験によって進学できる教育体制の構築を目指します」と発表されていましたが、法政大学千代田三番町中学校は、本原稿執筆時点(2026年7月30日)では、法政大学への内部進学枠や条件等は公式発表されていません。今後発表される内部進学枠次第によっては、さらに難易度が上がる可能性があります。

日本大学や東洋大学の付属校化で人気アップした2校

 目黒区の(旧校名)日出中学校も、大学準付属校化で人気校へ変貌した学校です。2017年12月に日本大学と準付属校契約を締結し、2019年4月から目黒日本大学中学校として新体制でスタートしました。2019年の偏差値は47、前年の偏差値が36(「晶文社首都圏中学受験案内2018」による現ONETES偏差値)でしたから、11ポイントも偏差値が上がったことになります。以後も進路実績の向上が評価され、偏差値が高まっています。

 また、東洋大学京北中学校も、2015年4月に京北中学校から校名を変更しました。東洋大学の付属校となったのです。これを機に偏差値も40から48へと8ポイントもアップしました。さらに2018年から2019年にかけても偏差値が7ポイントアップしています。これは、大学入試の入学定員厳格化のなか(【図2】のように明治大学の各付属校も偏差値がこの時期上がっています)、東洋大学への推薦権を持ちつつ他大学へ受験できる制度の整備、学校自体の認知の拡大により、受験者数が大幅に増加した結果と考えられます。

【図3】目黒日本大学中学校と東洋大学京北中学校の偏差値推移

【図3】目黒日本大学中学校と東洋大学京北中学校の偏差値推移
ONETES株式会社 2008年~2026年中学入試結果偏差値一覧(合格率80%)をもとに東京個別指導学院が作成。グラフ中の2027年7月は「2027年中学入試予想偏差値(7月版)」によります。男女で偏差値が異なる学校は女子の偏差値を、入試回によって偏差値が異なる学校は、入試初日の一般的なコースの偏差値を採用しています。 マーカーが付されていない年は、データ不足のため、算出できなかった年であり、判明年の前後を結んでいます。

広尾学園の拡大、そして大阪へ

 大学付属(系属)校以外にも目を向けてみましょう。

 2026年7月17日に広尾学園中学校・高等学校から、大阪府の金蘭会中学校・高等学校と教育連携を進め、2028年4月から「広尾学園大阪中学校・高等学校」への校名変更と男女共学化を行うとの発表がありました。

 今では首都圏で最難関校の一つである広尾学園中学校ですが、前身の順心女子学園中学校時代は生徒募集に苦しんでいました。男女共学化し、広尾学園中学校となったのが、2007年4月です。大胆な教育改革が支持され、偏差値は2007年の39から2026年の74まで35ポイントも上がりました。

 2008年4月に開校した村田学園小石川女子中学校(2013年から村田女子中学校に改称)は開校以来、偏差値が上がらない状態が続いていました。そこで2016年に募集停止、2018年に広尾学園中学校・高等学校と教育連携を締結し、2021年より共学化して広尾学園小石川中学校への改称を行いました。当時、既に人気校となっていた広尾学園のカリキュラムを導入し、両校の教職員の交流等が、事前に受験生・保護者・教育関係者に周知された結果、初年度から人気が急増して偏差値は61、翌年には67まで上がり、現在も入試難易度は上昇傾向です。

 東京と大阪という地域的な違いはありますが、大阪府の金蘭会中学校は小規模校で、入試難易度が高い学校とはいえません。しかし、広尾学園大阪中学校となることで、志願者数や偏差値が女子校時代から大きく上昇する可能性が少なくないと筆者はみています。

【図4】広尾学園中学校と広尾学園小石川中学校の偏差値推移

【図4】広尾学園中学校と広尾学園小石川中学校の偏差値推移【図4】広尾学園中学校と広尾学園小石川中学校の偏差値推移
ONETES株式会社 2008年~2026年中学入試結果偏差値一覧(合格率80%)をもとに東京個別指導学院が作成。 2015年度の現広尾学園小石川中学校の偏差値は晶文社「中学受験案内2015首都圏」によります。グラフ中の2027年7月は「2027年中学入試予想偏差値(7月版)」によります。男女で偏差値が異なる学校は女子の偏差値を、入試回によって偏差値が異なる学校は、入試初日の一般的なコースの偏差値を採用しています。 線が結ばれていない年は、生徒募集停止期間を示します。

学校法人開智学園が神奈川県にも進出

 経営が芳しくない学校法人が、大きな学校法人の傘下に入って学校が変わっていく事例もあります。

 埼玉県の難関中学校のひとつである開智中学校を経営する学校法人開智学園は、学校法人日本橋女学館と2014年に相互協力及び連携を進める基本合意書を締結、学校法人開智学園と学校法人日本橋女学館が合併しました。2015年から日本橋女学館中学校から開智日本橋学園中学校への名称変更を行い、共学化を学年進行で行いました。この変革により、開智日本橋学園中学校の難化が始まり、女子校時代よりも偏差値が29ポイントも伸びました。

 開智日本橋学園中学校・高等学校は、その後、国際バカロレアMYPとDP認定校になりました。国際バカロレア教育を学校全体に取り入れ、国内大学、海外大学への進学にどちらも有利な探究型の学びを提供しています。

 学校法人開智学園はさらに2024年に開智所沢中等教育学校を埼玉県所沢市に開校しました。こちらは、学校法人開智学園が設立した学校です。既存の開智中学校との教員交流や教育内容、そして開智高等学校の進路実績が新設校への期待感を大きくしました。さらに、グループ内校との同時併願システムも導入されたことで、初年度から偏差値56を記録しました。2026年度入試では、入試日程によっては開智中学校より高い偏差値にまで伸びています。

 このように勢いのある学校法人開智学園が、横浜市にある聖ヨゼフ学園(学校法人アトンメント会)の設置者変更認可を神奈川県から得たことで、2027年4月から「開智横浜国際中学校」とすることを発表しました。

 譲渡先として学校法人開智学園が選ばれた背景には、国際バカロレア(IB)教育との親和性もあったと考えられます。聖ヨゼフ学園は国際バカロレアPYP・MYP認定校であり、開智学園グループもPYP、MYP、DP認定校を複数運営(開智望小学校はPYP認定校、開智望中等教育学校はMYP認定校、開智日本橋中学校・高等学校はMYPとDP認定校)しているからです。

 開智横浜国際中学校への設置者変更ニュースは2026年6月でしたので、同校の偏差値は2027年中学入試予想偏差値(7月版)には反映されていません。今後、正式な入試要項や教育内容が発表されていきますが、偏差値動向が注目されます。

【図5】学校法人開智学園の主な中学偏差値推移

【図5】学校法人開智学園の主な中学偏差値推移
ONETES株式会社 2008年~2026年中学入試結果偏差値一覧(合格率80%)をもとに東京個別指導学院が作成。グラフ中の2027年7月は「2027年中学入試予想偏差値(7月版)」によります。男女で偏差値が異なる学校は女子の偏差値を、入試回によって偏差値が異なる学校は、入試初日の一般的なコースの偏差値を採用しています。

学校改革の専門家が関わる例も

 これまで学校(法人)同士の事例を取り上げてきましたが、別の学校の改革で実績を出した教員や専門家を迎え入れて、ノウハウを取り入れ、自校を発展させていこうとしている学校もあります。

 かつての戸板中学校は、2015年に校名変更・共学化・学校改革を行い、三田国際学園(2025年より三田国際科学学園に改称)中学校として人気校になりました。生まれ変わった当時の同校学園長は大橋清貫氏でしたが、大橋氏は以前、広尾学園中学校・高等学校の理事長を務めた方です。

 その大橋氏は、2023年からサレジアン国際学園中学校、サレジアン国際学園世田谷の学園長に就任しています。サレジアン国際学園中学校は2021年まで星美学園中学校(女子校)、サレジアン国際学園世田谷中学校は2022年まで目黒星美学園中学校(女子校)でしたが、校名変更や共学化、大橋氏の学校改革のノウハウが教育内容に浸透し、サレジアン国際学園世田谷中学校は偏差値低迷期間を抜け出し、勢いが出てきました。

 また、サレジアン国際学園中学校も偏差値が上昇傾向に転じました。同校へ2025年に校長として就任した宗像諭氏は、かつて広尾学園中学校・高等学校の共学化や教育改革、開智日本橋学園中学校・高等学校の共学化や国際バカロレア(IB)認定化に尽力した方です。

【図6】三田国際科学学園等の偏差値推移

【図6】三田国際科学学園等の偏差値推移
ONETES株式会社 2008年~2026年中学入試結果偏差値一覧(合格率80%)をもとに東京個別指導学院が作成。グラフ中の2027年7月は「2027年中学入試予想偏差値(7月版)」によります。男女で偏差値が異なる学校は女子の偏差値を、入試回によって偏差値が異なる学校は、入試初日の一般的なコースの偏差値を採用しています。

 学校同士の教育連携ではなく、学校改革の専門家が元気のない学校に着任して人気が出てきている学校は他にもあります。

 千代田中学校(旧千代田女学園中学校)に、2024年から校長に就任している木村健太氏は広尾学園中学校・高等学校で医進・サイエンスコースを立ち上げた方です。女子中学校時代は偏差値40に届かない時期が長かった学校ですが、2022年の校名変更・共学化を経て2027年中学入試予想偏差値(7月版)では48まで上がってきています。

 また、2026年に開設した明星Institution中等教育部(東京都府中市)の井上一紀校長は長く渋谷教育学園幕張で校長補佐・進路部長、渋谷幕張シンガポール校や早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校で教頭を務められた方です。渋谷教育学園幕張・渋谷教育学園渋谷の元教員や元生徒を教員として迎え入れ、新しい教育をスタートしています。既存の明星中学校の校長も兼任し、長く偏差値40台前半で推移していた明星中学校の偏差値も、2026年度は46へと難化傾向を見せています。(ONETES株式会社 2008年~2026年中学入試結果偏差値一覧(合格率80%))

生き残りをかけた生存戦略

 少子化のペースは、今後急速に上がっていきます。東京都教育委員会「令和7年度教育人口等推計報告書(就学予定者数・公立小学校児童数・公立中学校生徒数の推計)」によると、現在10万人以上いる東京都の12歳人口は2037年度には約7.5万人程度まで減少するとされています。

 中学受験に限らず、少子化の中で消えていきそうな学校は偏差値が低い学校が多いでしょう。偏差値とは、その学校に入学するうえでの難易度を表しますが、その学校に期待する生徒・保護者の人気度を示すものでもあるからです。志望者が増えれば入学難易度が上がり、偏差値も上がるのです。

 もちろん、偏差値は学校の教育内容の良し悪しを示す指標ではありません。偏差値が高くなくても、特色ある教育実践や独自の校風で、支持を集める学校は生き残る可能性は十分あります。

 今回触れた学校は、入試難易度の低いポジションから中堅校・難関校に上がっていった学校が少なくありません。これらの学校は、大学付属(系属校・準付属校を含む)化したり、大きな学校法人の傘下に入ったり、学校改革で実績を上げた人物を招き入れたりして、母校を失わないための努力をしているのです。東京都でも2029年度には12歳人口が10万人を割ります。5年・10年後には、大学付属校化・教育提携校化・学校法人自体の買収がさらに進むものとみています。

 少子化が加速するなか、「大学系列化」「学校法人の再編」「教育改革」は今後さらに増えていくでしょう。学校選びでは現在の偏差値だけではなく、その学校が今後どのような改革を進めようとしているのかという視点も、これまで以上に重要になりそうです。