小学6年生の学校見学のポイント(夏休み以降)

  • モチベーションアップ ⇒ 第一志望校や第二志望校の学校説明会
  • 本番の予行演習 ⇒ 入試問題体験会やプレテストなど
  • 入試傾向・出題方針等の情報収集 ⇒ 入試説明会(保護者のみ)

 小学6年生の夏休み以降ですと、夏期講習や志望校対策などの受験勉強が忙しくなってしまうので、多くの学校を回る時間的・体力的な余裕がなくなってしまいます。そのため、6年生では受験生本人を連れていく学校を厳選することをお勧めしています。

 例えば「第一、第二志望校は学校説明会に子どもを連れていくが第三志望校の説明会は親だけ」といった具合です。この場合、受験生本人を連れていく主な目的は「入試日まで前向きに受験勉強に取り組み続けるためのモチベーションアップ」です。中には、第一志望校に行くたびに校門の前に立った写真を撮り、勉強机の前に飾って「絶対に合格するぞ!」と、モチベーションを高めている子どももいます。

 そのほかにぜひ受験生本人を連れていきたいのは、「プレテスト」や「入試問題体験会」です。志望校の教室で受験生が実際に問題を解くわけですから、入試の予行演習になります。できるだけ参加させるとよいでしょう。

 6年生の保護者は、併願予定校が秋以降に開催する「入試説明会」にも参加しましょう。入試要項が正式決定・公表されるのは秋以降という学校が多いのですが、秋以降の説明会では入試問題そのものについて貴重な情報を提供する学校があるからです。

 例えば、「国語の第1回入試では説明文を出題し、第2回入試では物語文や随筆を出題します」「昨年度よりも算数の途中式を書かせる問題を増やします」「来春から理科は大問構成を変えて、小問集合の大問は廃止します」「時事問題は11月末までの出来事を出題対象とします」や、「出題傾向は変えませんので、安心して過去問題で勉強させてください」といった説明がある学校は少なくないのです。

小学5年生の学校見学のポイント

  • モチベーションアップ ⇒ 公開行事、体験授業や部活体験、学校見学会など
  • 幅広く受験候補校を知る ⇒ 公開行事、体験授業や部活体験、学校見学会など(子どもの反応をみる)

 小学5年生の場合は、なるべく幅広いタイプの学校、幅広い受験難易度の学校にお子さまと一緒に来訪することをお勧めします。6年生になってから複数校を回ろうとすると、学習時間を削ることになるからです。5年生の今でもかなり忙しい毎日かと思いますが、ぜひ時間を作って足を運びましょう。

 首都圏模試センター推計によると、2023年度入試での一人当たりの出願校数は6.92校でした*¹。約7校の出願のためには、少なくとも10校は学校見学をしておくことをお勧めします。現在の偏差値を基準としてプラス・マイナス10ポイントの偏差値の学校の中から、ご家庭の教育方針に合う学校を探していくとよいでしょう。

「できれば現状の偏差値以上の学校に合格させたい」と願う保護者もいらっしゃいますが、5年生後半から偏差値が伸びていく子どももいれば、残念ながら停滞したり失速したりしてしまう子どももいます。

 中学受験の場合、同じ年齢でも精神的な成長のスピードは個人差が大きいのです。5年生後半になってようやく受験に本気で向かうようになり、成績が伸びる子どもがいる一方で、暗記が得意でも、学習内容が複雑化していくにつれて、模擬試験や塾内テストで点数がとれなくなってくる子どももいます。小学校や塾での人間関係に悩んで学習に向かう意欲が下がり、成績に影響が出てしまう子どもも見かけます。

 長期間にわたる受験勉強の中では、順風満帆に進めることができる受験生の方が少数です。「現状の成績ならば」「現状より上がったら」「現状より下がったら」と、どんな事態になっても慌てないように、様々な偏差値層の学校に子どもと足を運んでおくことが大切なのです。

 5年生の場合は、学校見学会や体育祭、文化祭、研究発表会、部活体験会、体験授業などの中から、お子さまが興味を持ちそうな学校行事を選ぶとよいでしょう。文化祭や体育祭は各校の特色がよく表れるものです。

 中高生が一緒に行事を行う学校もあれば、中学生は中学生だけで行事を行う学校もあります。規律のとれた体育祭や文化祭を行う学校もあれば、規律は緩めでのびのびした学校もあります。学校全体で盛り上がる文化祭を行う学校もあれば、個々の生徒の自発性を尊重して文化祭を行う学校もあります。行事への先生方の関わり方も異なります。いくつかの学校を見比べていくと、違いに気付くことができるでしょう。

*¹ 首都圏模試センター「今春2023年中学入試はどうなったか?

小学4年生以下の学校見学のポイント

  • 中学受験への興味を持たせたい ⇒ 公開行事、体験授業や部活体験、学校見学会など
  • 多種多様な学校から子どもに合う学校の検討 ⇒ 公開行事、体験授業や部活体験、学校見学会など(子どもの反応をみる)

 小学4年生以下の場合ですと、どのような学校がわが子に向いているのかわからない場合もあると思います。共学校・別学校、進学校・半附属校・附属校、大規模校・小規模校、宗教教育の有無など、学校には様々な個性があります。できるだけたくさんの学校を見学しておくことは、わが子に合う学校を探すうえで大切なことです。

 第1回コラムで触れた通り、志望校は保護者が通わせたい学校ではなく、子ども本人が気に入った学校を選びたいものです。一緒に訪問することで、どんな中学校がわが子に合うかを確認できることが多いのです。家族で学校に足を運び、子どもにその学校の印象や感想を聞き、表情からどのような点に好印象を持っているかを把握して、志望校選択の参考にしましょう。

 そのためには、保護者のみで多くの学校説明会・見学会に参加して、子どもを連れていく学校を絞り込んでいくことをお勧めします。

 4年生の段階ですと、学校説明会で先生の話を聞いているうちに飽きてしまう子どもも少なからず見かけます。お勧めするのは、5年生と同様に、学校見学会や体育祭、文化祭、研究発表会、部活体験会、体験授業などの学校行事です。子どもが興味を持ちそうな行事を選ぶとよいでしょう。

学校見学会・行事はどう選ぶか

現学年 目的 内容 お勧め校数 誰が
6年生

モチベーションアップ

本番の予行演習

第1・2志望校の学校行事

受験予定校の入試体験会

1~2校

受験予定の開催校

子ども同伴
入試情報收集 入試説明会 併願予定校全て 保護者のみ
5年生

幅広い偏差値層の受験候補校を知る

モチベーションアップ

文化祭・体育祭、学校見学会

体験授業、 部活体験 など

10校以上が理想 子ども同伴
4年生以下

子どもに興味を持たせる

どのような学校が子どもに合いそうか知る

文化祭・体育祭、学校見学会

体験授業、 部活体験 など

10校以上が理想 子ども同伴

※東京個別指導学院が作成。おおまかな目安であり、ご家庭や子どもの状況によってお勧めする内容・目的・校数は異なる場合があります

学校見学会等の申込時の注意点

 今年は、コロナ禍の時期のような「説明会はオンラインのみ」「学校行事は非公開」ではなく、「対面」で説明会を行う学校や行事の一般公開を復活させている学校が増えています。オンラインには気軽に参加しやすいというメリットがありますが、なるべく実際に学校に足を運んで、納得のいく学校選びをしましょう。

 見学申し込みに際しては、同日に複数の学校行事が重なることがよくありますので、注意してスケジュールを立てましょう。まずは気になる学校をリストアップします。「5年生以下は10校以上」と記しましたが、リストアップの際には塾の先生に相談してみてもよいでしょう。

 次に、各学校のホームページで公開行事や説明会の内容と日程をチェックします。文化祭や体育祭、体験授業や部活体験、学校見学会など、内容は様々ですのでよく確認しましょう。

 申し込みは、学校ホームページや出願サポートサイトからという学校が大勢となっています。申し込み受付開始日時と締切日も併せてチェックしておきましょう。人気校の説明会や見学会は受付開始日に満席になってしまうことも少なくありません。どうしても参加したい学校への申し込みは、受付開始日に行いましょう。

学校に足を運んだときの確認リスト10

 受験案内冊子やホームページの閲覧ではなく、実際に足を運んで体感して、具体的に質問してみなければ知ることができないポイントをリストアップします。ぜひ参考にしてみてください。

学校に足を運んだときの確認リスト10

  1. 「教育理念」や「育てたい力」は、家庭の教育方針と合っているか
  2. 「校風」はどんなものか、わが子に合っていそうか
  3. 「先生」の話や様子は、わが子に合っていそうか
  4. 「校則」は、規律正しいか、自由か 家庭の教育方針と合っているか
  5. 「学習指導体制」は、生徒の自主性尊重か面倒見重視か 家庭の教育方針と合っているか
  6. 「大学進学状況※」は、家庭の教育方針からみて納得いくものか 今後についてはどうか
  7. 「クラブ活動や学校生活」への熱心さはどうか わが子に合っていそうか
  8. 「通学時間や通学手段」は、わが子にとって無理がないか
  9. 「周辺環境や危機管理体制」は、わが子が毎日安心して通えそうか
  10. わが子が楽しく通え、雰囲気に溶け込めそうか

※「大学進学状況」をホームページで公表している学校は多数ありますが、内部進学者の合格実績や一般選抜での合格の割合、学部(系統)を具体的に公表している学校はごく少数です。中には、ほとんどが文系学部に進学している学校や、大学進学の実績は指定校推薦によるものがほとんどの学校もあります。

 説明会や見学会等で生じた疑問点や不明点は、終了後でも遠慮なく質問しましょう。中には在校生に質問できる学校もあります。オンライン説明会では、チャットで質問できたり、事後の参加者アンケートで質問できたりする学校もあります。たくさんの学校に足を運ぶためにも、疑問点や気になる点はできるだけその場で解決することをお勧めします。

「現在の学校偏差値」のみに振り回されないで

 わが子の偏差値も志望校の偏差値も学校選びにおいては気になるところですが、極端に振り回されないようにしたいものです。なぜなら、生徒の偏差値と同様に、学校偏差値も変動するものだからです。

 下は、晶文社による最新の『中学受験案内2024年版』と、6年前の『中学受験案内2018年版』から、首都圏模試「ほぼ確実(合格可能性80%以上)偏差値」を比較した表です。

6年前に比べて偏差値が上昇した中学校は?

中学校名 2018年 2024年 上昇偏差値

青山学院大学系属

浦和ルーテル学院

38 66 +28
大宮開成 48 66 +18
日本大学豊山 41 58 +17
日本学園 41 56 +15
開智日本橋学園 50 66 +16
安田学園 48 63 +15
芝浦工業大学附属 55 66 +11
八王子学園八王子 46 57 +11
昭和女子大学附属 昭和 50 59 +9
三田国際学園 57 66 +9
栄東 63 72 +9
香蘭女学校 59 67 +8
かえつ有明 52 60 +8
青山学院横浜英和 59 67 +8
関東学院 50 58 +8
女子美術大学付属 45 52 +7
東京都市大等々力 56 63 +7
実践女子学園 47 53 +6
広尾学園 67 73 +6
専修大学松戸 60 66 +6
法政大学第二 64 70 +6

※『中学受験案内 2024年版』と『中学受験案内 2018年版』(いずれも晶文社)をもとに東京個別指導学院が作成。首都圏模試「ほぼ確実(合格可能性80%以上)偏差値」を比較

 入試回やコースによって基準偏差値が異なる学校もありますが、ここでは同書に太字で記載されている偏差値(男女で異なる場合は女子の値)をいくつか挙げました。6年前は今春の高校卒業生が中学受験をした年です。このときの偏差値よりも大きく伸ばしている学校がある一方で、6年前と変わらない学校や、下降している学校もあることがおわかりいただけるかと思います。
 
 さらに言えば、現在の偏差値が将来も同じであるとは限りません。現在の偏差値が70以上の学校の中には、保護者世代の多くが中学受験生だった1995年には偏差値60未満であった学校もあるのです。

29年前に比べて偏差値が上昇した中学校は?

中学校名 1995年 2024年 上昇偏差値
洗足学園 48 74 +26
栄東 53 72 +19
本郷 56 72 +16
吉祥女子 59 72 +13
頌栄女子学院 57 70 +13
鷗友学園女子 58 70 +12

※『中学受験案内 2024年版』(晶文社)と『中学受験案内 1995年版』(晶文社出版)をもとに東京個別指導学院が作成。首都圏模試「ほぼ確実(合格可能性80%以上)偏差値」を比較。男女で偏差値が異なる場合は、女子の偏差値を記載

 学校の偏差値とは、各校の教育の質そのものを表すものではありません。受験生と保護者の期待度や、教育成果のひとつの指標としての前年卒業生の大学入試結果によっても変わっていきます。変動要因は多岐にわたり、共学化や有名大学の系属校化・附属校化、校舎建て替えなどのほか、新路線開通、他校の入試日程や入試内容の変更といった要因でも相対的に変動します。

 中には、素晴らしい教育を行っているにもかかわらず、広報活動が不十分なためによさを伝えきれていないような中学校もあるのです。現在の学校偏差値を志望校選定の最重要項目にせず、広い視野で学校を見渡し、わが子と家庭の教育方針に合っているかどうかを大事にしていただきたいと思います。

おわりに

 6年生の後半になると、どうしても現在の子どもの偏差値と志望校の偏差値との差異や、入試問題の出題傾向や入試日程などから志望校・併願校を絞り込んでいかざるを得ません。だからと言って「偏差値〇〇以下の学校は不要」というような、偏差値のみでの志望校・併願校決定はお勧めしません。

 せっかく手間暇をかけて学校を選び、足を運ぶのです。現場でしか感じられない学校のよさや特徴を知り、子ども本人の反応を見て、志望校選択に役立ててください。現在の偏差値から合格が十分狙えて、しかも今後伸びていきそうな、お子さまにピッタリな学校に出合えるかもしれません。