日本の多くの会社組織をむしばんでいる「子ども病」にフォーカスを当て、組織の問題点を指摘してきた本連載。今回と次回は、様々な日本組織・人事を見てきた2人の識者ともに日本の組織をむしばんできた「子ども病」の正体を解き明かしていく。何が日本の組織を「コドモ」にした病巣か。そして、「大人」の組織になるためのカギとは?

左から勝呂彰さん、秋山進さん、古野庸一さん
Photo by Toshiaki Usami

<今回の鼎談メンバー>

秋山進:(写真・中央)
プリンシプル・コンサルティング・グループ 代表取締役
本連載の著者。主にリスクサイドから企業の組織コンサルティングを行ってきた。組織形態の多様性やその盛衰のメカニズムに詳しい。

勝呂彰:(写真・左)
元リンクアンドモチベーション副社長(昨年12月退任)
麹町アカデミア運営委員社会科学担当
ベンチャー企業を起業し上場までした立役者。ベンチャーや大企業の組織人事支援、かつCSR、異文化との文化統合などについて詳しい。

古野庸一:(写真・右)
リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所所長
リクルートでの経営企画を経験。大企業の組織コンサルや組織行動の研究、および個人のキャリア支援でも活躍。

なぜイチローは
ヤンキースを離れないのか

古野 秋山さんの新著『一体感が会社を潰す』を見たとき、タイトルが刺激的だなと思いました。多くの企業の経営者は、組織の目標を達成するために、一体感を作ろうと頑張っていますから、タイトルを見たときにドキッとしますね。でも、この本が本当に言いたいのは、一体感を目的にしてはいけないということですよね。

 経営者やリーダーは、ある目的を達成するために組織に一体感をつくります。でも一体感はあくまで大きな目的を達成するために醸成する中間目的に過ぎません。それをはき違えると、組織はおかしくなってしまいますね。

秋山 おっしゃる通りですね。一体感は、同調圧力と化し、多数派の言うことを聞かせるための道具になる可能性が高いものです。仲良しクラブの組織では、より高い次元を目指したり、人とは違ったことをしようとする人は排除されがちです。確かに、その方が当面は穏便に事が進み、中にいる人はストレスが小さいかもしれませんが、そうすると組織の主目的はどこかに行ってしまいがちですね。