来年に迫った電力自由化で、家庭向け電力市場に参入する石油元売り大手の東燃ゼネラル石油。同社は電力料金を既存の電力会社よりも割安に設定すると見られるが、その詳細が初めて明らかとなった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
2016年4月の電力小売り完全自由化をめぐって、新規参入する東燃ゼネラル石油の家庭向け料金の契約内容が週刊ダイヤモンドの調べでわかった。競合する東京電力の料金から最大6%割り引いて電力を販売する予定だ。今後、電力料金の低価格競争が本格化する。
現在の電気料金には、燃料費調整額と再生可能エネルギー賦課金が加算されている。東燃はこれらを除いた東電の料金に、使用量に応じて一定金額を割り引く予定だ。
週刊ダイヤモンド編集部が入手した東燃の内部資料によると、家庭向けの「従量電灯B」の契約で、契約アンペアが30アンペアの場合(東電の平均モデルで使用電力量290kWh/月)は割引率3%で約227円、従量電灯B・60アンペアの場合(同490kWh/月)は同6%で約862円安くなることになる。
電力市場の完全自由化に商機を見出した、東燃をはじめとする石油元売り業界や、東京ガスや大阪ガスといったガス大手、そしてソフトバンクなどの通信大手が参入を表明している。各社は電気料金やサービス内容などの詳細を詰めているが、電気料金については、現在、国が託送料金(電力会社が送配電網を使う料金)を検討している段階のため、どの企業も最終決定できていない。
年末までに託送料金も固まるが、その前に東燃が東電の料金からの割引率を決めたのは、半歩でも他社に先駆けて動き出し、市場での顧客争奪戦を有利に運びたいという思いからだろう。
東燃は顧客獲得のために直接、営業や契約業務などを行うわけではない。実働部隊となるのは、契約関係にあるガソリンスタンドを軸とした代理店が担う見込みで、11月13日に第一次代理店募集を締め切ったところ。16年1月から申し込みを受け付ける予定だ。
家庭向け電力市場の完全自由化は、東日本大震災で硬直的な電力市場が問題視されて始まった、一連の電力市場改革の集大成で、約7兆5000億円の家庭向け電力市場が開放される。
改革のポイントは消費者に選択肢が与えられることだ。自由化されていない現在の市場は、全国10社の電力会社が、それぞれの地域で独占的に電気を供給している。ゆえに市場には競争がなく、消費者には地域の電力供給を担う電力会社以外の選択肢はなかった。