「4月の求人数は、前年同月比35%にまで落ち込んだ。今年度は回復の見込みが立たない」(海老原嗣生・リクルートエージェント エージェントフェロー)
6月の完全失業者数は348万人、失業率は5.4%と発表され、労働市場は依然厳しい状況にある。そんな中でも、“派遣切り”や“内定取消し”が大きく取り上げられてきたが、とりわけ正社員転職市場の落ち込みはとても大きく、深刻だ。
実は、同じ正社員でも、新卒採用は世間で考えられているほど落ち込んでいない。実際、リクルートワークス研究所「大卒者の新卒採用見通し調査(2010年卒)」によると、2010年卒の新卒採用見通しが「減る」と答えた企業は15.8%程度だった。
一方の転職市場は、新卒市場と比べて落ち込みが激しい。リクルートワークス研究所「ワークス中途採用調査2009」によると、08年度の中途採用実績数(正規社員)は対前年比▲15.6%と急減しており、09年度に至っては対前年比▲43.4%となっている。同研究所の推計でも、09年度の求人数は対前年比▲10.4%と、バブル崩壊直後となる1993年の▲8.8%を下回る厳しさだ。
かつては“転職ブーム”とまで言われるほどさかんだった転職だが、現状はかくも厳しい。では、転職市場の回復は、いつになるのか。そして、この厳しい時期に採用を行なう企業の担当者、転職活動を行なう求職者が注意すべきポイントとは何か。
売上は前年比50%ダウン
転職エージェントに急ブレーキ
現在、転職マーケットは「(1)人材紹介、(2)求人広告料金が高いメディア(WEB中心)、(3)求人広告料金が安いメディア(WEB・紙)、(4)ハローワーク、の4層構造」(北村岳大・毎日キャリアバンク営業企画課課長)で表すことができる。
そんな中で、近年急成長をしてきたのが「(1)人材紹介」を行う転職エージェントだ。年収の30~35%を支払う「成功報酬型」の導入が後押しし、1990年代中盤から急速に拡大、07年にはピークを迎えた。
転職エージェント大手のリクルートエージェントは、売上高が99年3月期の81.51億円から08年3月期には437.06億円と5倍に拡大。転職決定実績も、同4712名から同3万2916名と7倍以上の成長を遂げた。
ところが、07年夏のサブプライムショック後に状況は暗転。活動求人数は08年1月の10万3356人をピークに減少し始め、09年4月には3万0965人と対前年同月比35%にまで落ち込んでいる。