
読者の反響が大きかった記事を再配信します。(記事初出時の公開日:2025年6月1日)
メディア露出やSNSで広がる退職代行の認知度。とくに若手社会人を中心に、会社を辞める手段の一つとして定着しつつあります。けれど、実際に使う前に少し立ち止まってください。その“安易な選択”が、のちの転職やキャリア形成に思わぬリスクをもたらすかもしれません。転職支援のプロが明かす、知られざる「大きな落とし穴」とは――。(クライス・アンド・カンパニー代表取締役 丸山貴宏)
退職代行の利用率
20代と30代で大きな差
渋谷や新宿の繁華街を歩いていると、退職代行の広告トラックを目にすることがあります。こうしたカジュアルな露出やニュースで話題になったこともあり、退職代行はこの数年で急速に認知を広げてきました。
エン・ジャパンが2023年に行った調査では退職代行サービスの認知度は72%で、実際に退職代行サービスを利用したことがあるのは2%でした。ただし年代別で見ると、利用したことがあるのは30代が2%、40代以上が1%であるのに対して20代は5%で、やはり若い人の割合が高くなっています。
一方、東京商工リサーチが企業側に行ったアンケート調査では、退職代行業者から退職手続きの要請を受けた企業は全体の約1割で、大企業の18.4%、中小企業の8.4%としています。これらの数字を見る限りは、実態以上に注目を集めているように感じます。
SNSや動画、メディア露出を巧みに使っているので、若い人が退職の二文字を頭に浮べたときサービスが第一想起されるのも無理はありません。「自分で退職を申し出るといろいろ大変だし……」「簡単には辞めさせてくれないかもしれないし……」と依頼する人もいるでしょう。
しかし、自分で退職を申し出るより楽だからといって退職代行を安易に利用することは、その後のキャリア形成にマイナスの影響が出る可能性が高いです。これまで数多くの転職を支援してきた立場から、退職代行サービスを利用した人が背負ってしまうあまりに大きいリスクについて説明していきましょう。