年収で200万円の
差をもたらす英語力

 では企業は、英語力にどのくらいの価値を見いだしているのだろう。

 転職市場のデータを見ると、年収にはっきり反映されていることが分かる。

 まず「英語力とTOEICⓇの平均値」(表1)を見ていただきたい。ネイティブに匹敵する英語力があると自己申告した人のTOEICⓇ平均スコアは約927点。ビジネス英語が使える人のスコアは約842点、日常会話ができる人は約713点、基礎会話は約603点、そして英語力がないという人は約519点である。英語力がないと自己申告した人でも中学校から大学までの10年間も英語の勉強をしている前提なので、まったく話せないはずはない。ただテストの点数を取るために文法や単語を覚えても、実践的に使う訓練をしていないので、相手に言いたいことを伝えたり、相手の言うことを聞き取る自信がないということだろう。

横軸が年齢、縦軸が自己申告による英会話力の違いを表す。平均年収比率とは、英会話力「なし」の1.00を基準として、各英会話力の年収を比較して指数化。(出所:表1・表2ともにビズリーチ調べ)
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 この英語力の差を踏まえて「英語力と平均年収比率」(表2)を見ると、20歳では大きな差は見られないが、30歳になると「なし」と答えた人の年収を1とした場合、「日常会話」の人は約1・12、「ビジネス会話」は約1・27、「ネイティブ」は約1・40という差がついている。これが、一般的には管理職の肩書きが付くといわれる年齢の40歳では「日常会話」が約1・19に対し、「ビジネス会話」約1・39、「ネイティブ」約1・69という明確な差となって表れている。

 金額ベースでは「基礎会話と日常会話では大きな差がありませんが、日常会話とビジネス会話では200万円ほどの差があり、ビジネス会話とネイティブでも200万円ほどの違いがあります」(多田取締役)。金額の違いは肩書の違いとして表れているはずだし、役員レースに加われるかどうかの差にもなりそうだ。

英語力を高める
努力を会社も評価

 しかし企業によっては、英語力を磨く努力を社員の自主性に任せているところもあるだろう。それでも自身のキャリア形成の一環として英語力のレベルアップを図ることは「推奨できる」と多田取締役は言う。

「英語力に限らず、MBA(経営学修士)など自己研さんを重ねて自身の市場価値を高め続けることは、ビジネスパーソンとして必要なこと。仕事の幅を広げることにも役立ちます。また自己研さんする姿を企業側も見ているので評価につながる可能性も高いでしょう」

 英語の学習法の王道は英会話教室に通うこと。プロの英語教師の指導の下、自分の実力に合ったカリキュラムで学ぶことができる。通勤や昼休みなどの隙間時間や休日は英語の学習機器を使うという手もある。そうした努力が5年後、10年後、ライバルとの差となって表れる。