ミッシングリングと
防災インフラの整備を

 もちろん維持管理や更新が重要だからといって、必要なインフラ整備が滞っては本末転倒だ。首都圏のインフラは必要十分に整備されているように見えるが、実はまだ“ミッシングリング”が存在するという。

 「中心部から郊外に広がる放射型の交通インフラに比べると、環状型のインフラは意外に整備されていません。首都圏三環状道路を例に挙げると、圏央道は充実してきましたが、用賀から湾岸にかけての外環道は、まだ具体的な計画すら立っていません」(石倉准教授)

 インフラの整備によって、経済活動は活発化する。人の移動が起こり、魅力的なまちができて、さらに人口が増えるという相乗効果がある。その一方で、過疎化が加速されるなどの地域間格差も生まれる。利便性だけを求めても、ゆがみが生まれる。インフラ整備が目指すのは、効率的な移動と経済の活性化だが、そのバランスが重要になる。

 「社会基盤の時間視野は長期的で、特に大規模なものは使用期間も寿命も長いために、世代を超えた視野で、社会基盤のマネジメントを考える必要があります」と語る石倉准教授。メンテナンスを含め、空間的、時間的なマネジメントが、適切に求められるのだ。

 最近では、インフラに防災の機能も求められている。都心部でもゲリラ豪雨などの被害が相次ぎ、耐震補強など地震対策も必要とされている。

 「防災は重要な課題の一つですが、何もかも対策すればいいというものではありません。一時的な災害のためにオーバースペックのインフラを整備すると、費用対効果のバランスが崩れてかえってマイナスの結果になりかねません」(石倉准教授)。

 今、技術の進化でインフラの維持管理の現場は効率化が進んでいる。コストを意識したインフラの維持管理や更新を考えること。そのためのマネジメントが急務なのだ。