大学選びの基準は就職実績──こんな受験生や保護者が増えているという。
大学は就職予備校ではないが、学生が広く社会で生き抜いていく力を身につけられるよう、さまざまな取り組みを行い、進化を続けている。
そんな大学の最新事情とともに、大学選びに際して親が果たすべき役割について、大学通信の安田賢治・常務取締役に聞いた。

 


  大学の再編、学部・学科の新設が相次いでいる。

大学通信
学校戦略支援センター
情報調査・編集部ゼネラルマネージャー
安田賢治 常務取締役
1956年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大学通信入社。中学受験から大学受験まで幅広くカバーし、書籍編集とマスコミへの情報提供を担当。各誌への執筆も多い。

  その背景について、大学通信の安田賢治・常務取締役は、「18歳人口の減少に伴い、大学の学生募集が困難になることが予想されます。より時代のニーズに合った新学部設置などによって、大学そのものの魅力を高め、より優秀な学生の確保や少人数教育によるカリキュラムの活性化を図るために、新学部や学科を設置しているといえます」と、説明する。

  加えて「拡大ではなく内容の充実へと、大学改革の方向性が変わっていることにも注目したいところです」と言うことだ。

キャリア形成や少人数
教育がスタンダードに

 こうした動きのなかで、共通するキーワードがある。「就業力」だ。

「大学は小学校から始まる教育の、いわば仕上げの段階。社会で生きていくための力をつける最後のチャンスです。 学生自身や保護者はもとより、社会の側からも、就業力教育に対する期待が高まっているのです」(安田常務)。

 確かに、新設学部・学科を見ると、キャリアに直結するカリキュラムをうたうケースが多い。課題を自ら見出し解決するプロセスを経ながら学習していく、実践的な講義やゼミナールなどで特色を出している。

 地域でのフィールドワークや産学協同の取り組みも急増し、教員が学生一人ひとりとていねいにかかわる少人数教育も浸透してきた。

 入学初年次からキャリア教育を取り入れる大学も増えた。就職活動向けのエントリーシートの書き方や面接作法などといったスキルのトレーニング以前に、働くとはどういうことかといった、社会で生きていくための姿勢を根本から問い直すようなカリキュラムを組む。全人的な潜在力を見出し、伸ばしていく教育を模索する傾向が強いようだ。

 こうしたキャリア教育の効果は高く、早くから採用している大学では、就職率向上などの目に見える成果を上げているケースが少なくない。文部科学省も、就業力を高める取り組みに対し補助金を拠出してサポートするなど、大学のキャリア教育を推進する立場を取っている。

「就業力」に直結するコミュニケーション力を養うものとして、英語を中心とした語学教育に力を入れる動きも顕著だ。従来型の読む・書く学習から、聞く・話す能力を伸ばすカリキュラムへのシフトが、最近の特徴として挙げられる。

 習熟度別の細やかなクラス分けや、日常やビジネスの場で英語を運用する能力を習得するための授業など、各大学で独自の工夫を凝らしている。もちろん、語学教育においても、きめ細やかな指導を支える少人数教育が主役となっていることはいうまでもない。