地元企業の雇用創出が
地域の活性化につながる

 地方創生を推進するに当たり、各自治体が政府からの要請を受けて策定した「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を見ると、総じて、人口流出に歯止めをかけるための施策が示されている。地方経済停滞の大きな要因は、就業機会の不足による人口流出であることから、地方創生を図るには雇用創出が不可欠であり、今、全国各地で取り組みが行われている。

 例えば東北。自動車関連産業の集積が進むこの地域では、製造出荷額も伸び産業振興の機運が盛り上がっている。ところが、地元での部品調達率は、中部地域や九州北部と比べると高くない。もともと東北の産業は電子部品が中心で、自動車部品を扱う地元企業が少なかったからだ。地元での部品生産が増えなければ、雇用の拡大にはつながりにくい。そこで、進出メーカーでは企業内学校に、自動車関連事業への参入を目指す地元企業の従業員を受け入れ、技術指導をしている。また、自治体でも高度な技術者を養成・輩出し、地元企業の部品生産の拡大を通して雇用創出を図っている。

地域の競争力強化や
資源を生かす政策が必要

 地域企業の高度化とともに、新たな産業の育成に取り組む地域も多い。近年、超高齢社会を背景に、医薬品・医療機器分野の生産額は高い伸びを示している(図2参照)。それに伴い、医薬品の研究開発拠点の展開や、医療機器、介護用品などの分野で、関連企業や新規参入の動きが全国的に広がっている。ある県では、産学官が連携して医療機器関連企業の集積を図り、生産額を年々伸ばすとともに、独自の展示会の開催や、開発支援機関の整備などを通じ、産業の強化・発展に力を入れている。

 一方、新産業の芽として、フランスの化粧品業界との連携で化粧品関連産業を集積し、アジア市場向け製造・輸出拠点づくりを推進している県もある。関連企業の誘致、国際取引の促進、地域資源を資本にした6次産業の創出などを目指しており、地元では雇用創出、地域活性化につながると期待を寄せている。

 企業誘致が成熟期に入った今、地域資本を活用する誘致手法が各地で展開されている。企業は、地域産業の技術力強化や、固有資源を生かした誘致政策を進める地域に注目する。戦略的な企業誘致と地元企業の育成を図ることが、競争力のある地域をつくり、地域経済の活性化、雇用拡大につながっていく。