人事部門だけでなく、一般のマネジメント層の
利用を想定したシステム

 顔写真を取り込める人事システムは他にもある。しかし、カオナビとは「目的が違う」と柳橋氏は言う。給与計算や勤怠管理などの業務処理が目的であれば、コンピュータが処理しやすい社員番号がメインになる。極端な話、名前すら必要ない。しかし、定性的な情報を必要する人材マネジメントのためのシステムでは、顔と名前が重要。目的が異なれば、システムの構造も異なるのが当然だろう。

 システムとしてのカオナビの最大の特徴は、設計や変更が自由自在にできることだ。人事管理の作業では項目が固定されていることが多いが、人材マネジメントでは会社によって必要となる項目が異なる。それに対応するには柔軟性が欠かせない。カオナビでは、必要な項目を簡単な操作で追加でき、ソートや絞り込みも自由自在だ。しかも、設定できる階層の数や項目の数は無制限であり、顔写真がアイコンになっていて、直感的に操作できる。

所属や職種、評価などの項目で顔写真を並べ替えたり、分類することも簡単にできる。導入企業が独自の項目を容易に付け加えられる柔軟性も備える(上)。またカオナビに入っている人材情報はそのままスマートフォンで参照できるので、外出先でも効率よく人材マネジメントが行える(左下)。

「カオナビは人事部門だけが使うものではなく、一般のマネジメント層が使うことを想定しています」と柳橋氏。

 多くの企業では既存の人事システムと併用されているが、カオナビがクラウドサービスとして提供され、初期費用ゼロで、手軽に導入できることがその背景にある。従業員のデータは、既存の人事システムからCSVファイル形式で流し込むだけ。顔写真も社員証用のものを流用できる。

 さらにスマートフォンやタブレットから利用できるメリットも大きい。「全国に店舗を展開する飲食チェーンなどでは、スーパーバイザーが店舗を訪れる直前にカオナビをチェックして、顔と名前を覚えた上でアドバイスすれば効果的です」(柳橋氏)。現場で気付いたことをその場で人事情報のシートに追記できるのも大きなメリットだ。

顔と名前の一致により
責任を持った人事評価が行える

 カオナビは2013年に本格的なサービスを開始して以来、急速にユーザー数を伸ばしている。導入企業は、業種業態に関係なく、大企業から中小企業まで幅広い。「ある急成長しているIT企業からは、『カオナビのおかげで、規模が大きくなっても創業当時の活気が保たれている』と評価していただいています」と柳橋氏。顔が見えることで気持ちの通った企業運営ができている証しだ。

 人事評価という面では、スムーズな評価作業を支援する「人事評価ワークフロー機能」がオプションで用意されている。カオナビ上で自由に評価フォームを設計でき、設定した承認経路で回すことができる。評価シートを配布して回収するといった手間は一切不要になる。そのため人事部門にも好評で、導入企業の約4割がこのオプションを選択している。集められたデータはエクセル帳票として出力でき、面談の際には紙に印刷して利用するケースも多いという。

「最も大事なことは、顔と名前を一致させることで責任を持った人事評価が行えることです」と柳橋氏。激しい競争にさらされる今、評価する側も厳しい覚悟を持って本音でぶつからなければならない。そういう人事評価こそが、社員の能力を引き出し、会社の業績向上にもつながる。カオナビはその実現を支援するシステムなのである。