目の病気とはいっても、体の別の場所に原因があることも。

 代表的なのは、糖尿病の合併症として起こる「糖尿病性網膜症」だ。初期の段階では自覚症状が少ないが、失明原因の2位になるなど、放置すると怖い病気だ。

 視野が欠ける、ものが二重に見える、片方の目が見えないといった場合、脳梗塞や脳腫瘍といった脳の病気のこともある。

 目の病気を早期発見する上で、人間ドックは非常に有効だ。標準的な人間ドックの場合、視力に加えて、眼圧の測定や眼底検査が含まれているため、主な目の病気を発見できる。40歳を超えたらぜひ受けておきたい。

 注意したいのは定期的な検査を忘れがちな、フリーランスの社会人や専業主婦、定年退職後の高齢者だ。自覚症状のないまま病気が進行していることもある。年に1回程度は、意識して目の検査を受けるようにしよう。

紫外線とタバコで高まる
加齢黄斑変性のリスク

 目の病気を抱えている人はもちろん、「今は問題ない」という人も、目の負担を少しでも減らしておきたいもの。職場の環境や生活習慣で目の健康状態も大きく変わってくる。

 室内で、まず気をつけたいのが照明。適度な明るさに保つ。エアコンは、風が目に直接当たらないように工夫するだけでも、目の乾きがずいぶん違う。湿度が低い場合、加湿器を使うのもいいだろう。蒸しタオルなどで目を温めるのも効果的。「目の乾燥を防ぐ油分が出やすくなる」(所名誉教授)という。

 適度な運動は、生活習慣病を防いだり、血行が良くなるといった効果が期待できるし、目にもいい。ただし、ジョギングやウォーキングの際には、紫外線に注意したい。大量に紫外線や青色光を浴びると、白内障や加齢黄斑変性になるリスクが高まる。帽子をかぶったり、サングラスをかけるなどして、紫外線対策をしておきたい。

 タバコは、目にも悪い。喫煙習慣のある人は、白内障や加齢黄斑変性のリスクが高まることが知られている。

 食生活はバランスよくが基本。目にいい食べ物としては、ブルーベリーがよく知られているが、「ルテイン」を多く含むブロッコリーもおすすめだ。ちなみに、ビタミンAは、目の細胞を健康な状態に保つ働きがあり、極端に不足すると暗い場所に目が順応できない「夜盲症」(いわゆる鳥目)になることがあるが、現代では不足している人は少ないようだ。

 良好な職場環境に適度な運動と目によい成分を含みつつ、栄養バランスの良い食事――。激務に追われるビジネスパーソンからは、「すべてを変えるのは無理」との声もあがりそうだが、少しずつでも改善して「目にやさしい生活」を送ってみてはいかがだろうか。

 次回以降、「緑内障」「加齢黄斑変性」について詳しく取り上げる予定です。ご期待ください。

監修:所 敬・東京医科歯科大学名誉教授