謙虚さと革新性で
時代の変化に対応する
多様な「人の力」こそが同社発展の原動力だという稲畑社長。人の力で生きた情報が連綿と伝えられるからこそ、組織も社会も時代を超えて続いていく。
「『情報=記号+意味』と定義すれば、お客さまに提供する情報に意味付けをするのが私たちに求められる『人の力』です」
その言葉からは、顧客と真摯に向き合いながらもニーズの変化を的確につかみ、自らも変わり続ける革新力を備えようという稲畑社長の決意がうかがえる。
実際、稲畑産業の歴史は目まぐるしい変化の連続であった。
祖業ともいえる染料ビジネスは徐々に縮小し、戦後は医薬品販売が主力に。一時は同社の看板ともいえる一大事業だったが、「1984年に別会社として分離。
その穴を埋めるべく、80年代以降はバブルの追い風にも助けられましたが、各分野における海外ビジネスを伸長させました」と稲畑社長。
当時、日本の製造業は円高の進行とともに生産拠点を海外にシフトし始めていたが、これを追い掛けるように東南アジアや中国で合成樹脂などの製造・加工拠点を拡大した。
同社は、「目指す姿=Vision」として「時代とともに変化する顧客と社会のニーズに応え、グローバルに事業を展開することにより、価値ある存在として常に進化を続ける」ことを掲げているが、まさにそれを具現化し続ける歴史であった。
こうした企業としての変化を促してきたのは、その時々の現場で時代の潮流をつかみ、高い専門性と情報力を駆使しながら、新しいビジネスの可能性を切り開いていった脈々と続く「人の力」に他ならないのだ。