教育者、事業家、経営学者など多彩な顔を持つ野田一夫氏の経歴を表すとき、よく「平成の吉田松陰」という表現が使われる。国の行く末を憂い、新しい時代を切り拓き、担う人材の育成を目指した松陰と野田氏の共通点、それは「人」である。歴代の経営者からベンチャー起業家まで、幅広い人脈から抽出された「経営者の要諦」とは?
明確なビジョン、志を持ち、自分に正直に生きること
戦後、東西冷戦の勃発を機に、アメリカによる日本の占領政策は大きく変わった。極東における強力な同盟国となるべく、経済大国への道が拓け、旧財閥に代わって松下幸之助や本田宗一郎をはじめとする若き起業家にスポットがあてられたのだ。
野田氏は、後に歴史に名を残す経営者とも親交を持ち、経営者としてあるべき姿を自らの言葉で発信し続けてきた。「明確なビジョン、志を持ち、自分に正直に生きること」「失敗を恐れず、成功するまで挑戦を続けること」「誰に対してもはっきりとものを言い、自分が間違っていたときは素直に認めること」など。
野田氏自身、立教大学に国内初の観光学科を創設する際、周囲からなんといわれようと志を貫き、看板学科(後に学部に昇格)に成長させている。人脈と体験を通じ、経験を血肉としてきた言葉を持つ野田氏は、やがて新しい時代の起業家たちから師事されるようになる。ソフトバンクの孫正義氏、H.I.S.の澤田秀雄氏、パソナグループの南部靖之氏。「ベンチャー三銃士」と呼ばれる3人をはじめ、野田氏を師として慕う経営者は多い。
孫氏、澤田氏、南部氏は、いずれもまだ会社が小さかった頃に野田氏と出会い、語られる経営者としてあるべき姿に感化されたという。「ふわふわした夢ではなく志を掲げよ」「自分を信じて戦い続けよ」。現代の名経営者は、経済学の重鎮の言葉をどう受け止め、自らの推進力としていったのか。新しい時代の扉を開くカギが、ここにある。
動画提供/株式会社矢動丸プロジェクト