中国でビジネス展開する
日本企業にとっても大きなメリット

 SBクラウドには、膨大なデータの扱いに慣れたアリババのノウハウが搭載されている。しかし、「SBクラウドはあくまでも日本のサービス」とガン氏は強調する。SBクラウドの拠点となるデータセンターは、東京都内に置かれている。

 国内データセンターとアリババが中国で運営するITインフラの組み合わせによって、中国ビジネスを展開する日本企業は大きなメリットを享受することができると、ガン氏はいう。

「日本企業が中国拠点でIT環境を用意し、運用するのはとても大変です。Webサーバーを1台立てるだけでも、かなりの手間と時間、コストがかかります。SBクラウドなら、日本から中国のクラウドを構築が可能です。サーバーを用意したり、エンジニアに依頼したりする必要はありません。もちろん、料金は日本円で本社が一括して支払うことができます。また、日本と中国は地理的に近いので、通信の遅延を最小化することができます。これはクラウドサービスの利便性、快適性にとって非常に重要なポイントです」

 日本のSBクラウドのクラウドデータセンターからアリババクラウドに接続することで、中国の消費市場にもアクセスしやすくなる。そのための手段としても、SBクラウドへの期待は高まっているようだ。

 前述したように、SBクラウドはIaaS事業としてスタートした。ただ、ガン氏は徐々にサービスの守備範囲を広げていく考えだ。

「たとえば、IoTやビッグデータを扱う際にはデータベースだけでなく、高度なアナリティクス機能などが欠かせません。今後は、こうした機能を搭載したPaaS事業なども展開する予定。いずれは、SaaS※2事業もと思っています」

(※2 SaaS=Software as a Service、クラウド上で稼働するアプリケーションをサービスとして利用すること)

「1年をかけてSBクラウドを準備しました」と語るガン氏が、この事業にかける熱意は相当のものだ。

「私たちにとって大きなチャレンジであり、パブリッククラウドの"ニュースタート"でもあると考えています。準備期間中には、徹底的に議論を重ねました。なぜ、日本ではパブリッククラウドがあまり使われないのか。なぜ、市場の成長が遅れているのか。現状の課題を多角的に検討した上で、分かりやすく使いやすいセットメニューというコンセプトにたどり着きました」

 SBクラウドはスタートしたばかり。今後、多くのユーザーからフィードバックを得ながら、改善を繰り返していくという。そして、「遠くない将来には、世界へのサービス展開を進めたいと考えています」とガン氏はいう。世界を見据えつつ、まずは日本国内での存在感を高める。世界を目指す日本企業にとっても、SBクラウドは頼りになる存在になりそうだ。

(取材・文/津田浩司 撮影/宇佐見利明)