棲み分けが
明確になってきた学習塾

「ここ数年、学習塾の形態も少し変化が見られます。首都圏では、従来からの難関私立中高を目指す塾がある一方で、経済的な理由を背景に志願者の増えた公立中高一貫校の受験対策をする塾が増えています。また個別指導塾は、中高一貫校の授業を補完する場として定着しつつあります。中高一貫校の生徒を教える場合、学校によって教科の進度が違うので集団塾では対応できないのです。また高校受験対策としては、地元公立校の入試事情に詳しい〝地元密着型〟の学習塾に人気が集まる傾向があります」

 もう一つの流れは、受験だけの対策だけでなく、大学進学後や社会に出てからのことを見据えた能力開発的な講座を持つ学習塾が増えていること。

「今、大学のAO入試などでも、PISA(国際的な生徒の学習到達度調査)で試されるような能力が重視されています。つまり単なる知識の集積ではなく、読解力や数学的、科学的リテラシー、問題解決能力など。そうした能力を子どものときから培う、受験対策に偏らない作文教室や科学クラブ、速読講座などが増えています。

 このように学習塾のバリエーションは年々増え続け、以前より棲み分けが明確になってきた感があります。そこで大切になるのは、目標やプランに合わせた適切な学習塾選び。正しい選択は子どもたちの〝やる気〟に直結するので、まず塾に行く目的をはっきりさせ、子どもとの合意の下に学習塾を利用することが肝要になるのです」

 内発的動機で子どもたちを「やる気」にさせるのは難しいが、最適の環境を整えることはできる。そこで取り違えてはいけないのは、ヘルプとサポートの区別だという。

「塾選びなど必要なヘルプはしてあげなくてはならないが、自分でできることは先回りせずにサポート役に徹すること。目的があって初めてゴールを設定できる。親ができるのは、そのゴールに向かうための個々の目標をサポートしてあげることだけです。今は就職活動にも親が参加するような風潮がありますが、できるだけ早く子どもを〝手放した〟ほうがいい。親がなんでもヘルプしていると、子どもの〝やる気〟はいつまでも育たないのです」


週刊ダイヤモンド」2011年2月12日号も併せてご参照ください
この特集の情報は2011年2月7日現在のものです