近年、多くの県が人口減少の歯止めと地域経済の活性化、魅力的な地域社会づくりを目指し、知恵を絞って地元の特性を生かした地方創生に取り組んでいる。茨城県では、東京圏から新たな人の流れをつくり出す施策として「トライアル移住・二地域居住推進事業」をスタートさせた。東京へのアクセスの良さを生かし、働き方改革を進める都内の企業とタイアップして社員の移住・二地域居住のトライアルを始める。企業や社員にとって茨城県と始める「働き方改革☓移住」にはどんなメリットがあるのだろうか。

東京から電車で1時間ほどの地域に自然が広がる茨城県(写真は筑波山)

まずは「いばらき ふるさと県民登録制度」で人を呼ぶ

 はじめに、茨城県の人口推移とこれまでの地方創生の取り組みを振り返っておこう。

 他県と同様、人口減少や過疎化への対策は茨城県でも喫緊の課題だ。平成27年国勢調査によると、前回調査(平成22年)に比べ、東京からアクセスの良い、つくば市やつくばみらい市、守谷市などでは人口が増加したものの、8割以上の市町村で減少。その結果、総人口は5年前より約5万2000人減り、約291万人となっている。

 こうしたなか、茨城県が始めたのが東京圏から同県へ新しい人の流れをつくり出す「第2のふるさと・いばらきプロジェクト推進事業」だ。プロジェクトを担当する、茨城県企画部地域計画課の前田優課長はその取り組みを次のように話す。

前田 優 茨城県企画部地域計画課 課長

「各県がそれぞれの特徴を生かした自立的で持続的な社会を築く地方創生に取り組んでいます。その中で茨城の一番の魅力は何かというと“東京から近い”こと。アクセスが容易でありながら、豊かな自然や美しい田園風景が広がっています。ただ、誰にとっても移住の決断は簡単なことではありません。そこでまず、移住に至らなくても、頻繁に足を運んでもらって交流人口を増やすことに力を入れてきました。茨城県を訪れる人が増えれば、地元経済もうるおい、活気も生まれます」

 その施策の1つが2016年4月から始めた「いばらき ふるさと県民登録制度」だ。

 県外に住む人が「ふるさと県民」に登録して県民証をゲットすると、県内の協賛となっているレンタカーや宿泊施設での割引、茨城マルシェ(東京銀座にある茨城県アンテナショップ)での割引、季節ごとの情報誌『タライバ』(いばらき移住・二地域居住応援マガジン)の無料配送などの特典を受けられる。協賛店は現在、100店舗を超えているという。茨城県は東京から近くてアクセスも便利なため、「平日は都内で働き、週末などは田舎でゆっくり過ごしたい」という二地域居住のニーズも多く、登録者数は2017年2月現在、3500人近く。『茨城移住なび』サイト(http://iju-ibaraki.jp/)からも登録が可能だ。