日本総合住生活(JS)は1961年に団地サービスとして設立されて以来、集合住宅管理のパイオニアとしてUR都市機構や分譲管理組合の要望に応えながら技術力と現場力を磨いてきた。重要な生活インフラである「団地」が今、老朽化という難題に直面している。日本総合住生活はどう対応しようとしているのだろう。

 わが国の集合住宅約600万戸のうち、住宅団地は約5000団地・約200万戸を占める――国土交通省の実態調査(2013年末時点)により明らかになった数字だ。国交省は、こうした高経年団地を貴重な住宅ストックと位置付け、有識者を加えた検討会を設置し再生を目指している。

団地再生に対応した
技術や施工法を開発

日本総合住生活
技術開発研究所
諫早英一所長

 高経年住宅団地を再生するためには豊富な知見と高い技術力が不可欠である。都市再生機構(UR)のグループ会社・日本総合住生活(以下、JS)は、“技術開発拠点”として06年、埼玉県さいたま市に4棟から成る「スクエアJS」を開設した。このスクエアJS内で技術開発を担当するのは本館にある技術開発研究所だ。同研究所の諫早英一所長は「設備の老朽化や旧態化が著しい住宅ストックを再生するための技術や工法を開発したり、JSが日々の建物管理の中で磨いてきた技術・工法を顧客に提案しています」と同研究所の役割を説明する。

 これらの技術は、住戸モデルを使って実験・評価を行う「ストック技術実験館」(次ページ囲み参照)と工法・工具を展示する「ストック技術提案館」で見ることができる。

 スクエアJSには居住者の安心・安全を守るという使命もある。本館・研究所内には、水道水や排水の検査や汚染物質の測定など室内空気環境を守る環境技術グループがあり、水道水や排水の検査を行っている。シックハウス症候群の原因とされる汚染物質の測定も行い、快適な住環境を守っている。

 諫早所長は「建物の延命技術や後付けエレベーターのような大きな設備の開発はもちろん、改修に使う部品や専用工具の開発も重視しています。それは顧客の予算内で最大の効果を上げ、居住者の皆さまにも喜ばれることを大きな使命と捉えているからです」とJSの姿勢を話す。一例を挙げれば、老朽化した給水管などを切断する静音カッター(鋼管SGPカッター)は低コストで作業できることに加え、工事騒音で居住者に迷惑を掛けたくないという現場の声からJSが開発したものだ。

「ストック技術提案館」にはJSが現場の声を生かして開発した工法・工具を展示している