これまでの事業の対象市場が成熟し、停滞しているなかで、新業態への挑戦こそが、新たな成長機会をつかむのではないだろうか。事業構想の立案から立ち上げまで、その成功確率を高める方法論をさまざまな角度から語ってもらった。

STEP 01
ニーズの芽に気づき価値を具体化する

 創業から10年以内に本業の売上高を超え、15年後に2.6倍になった新規事業に、文具事業の「プラス」から分社化した「アスクル」のケースがある。

 「プラスは当初、文具業界のコモディティ化と文具小売りの衰退を背景に、流通業に進出しようと自社製品のみのカタログ販売を開始した。しかし顧客の中小企業から“他社製品も欲しい”“在庫スペースや総務社員の時間を省きたい”という声(ニーズの芽)を聞き、“オフィスに必要なあらゆるものを提供する”というマーチャンダイジングを実現。他社の製品も扱うことを決断し、注文を受けたらすぐに配送する(明日来る=アスクル)文具の物流システムを構築した。

  その後、顧客のニーズに応えながら、取扱商品アイテムやカテゴリー、サービスの領域を徐々に拡大し、本業を超える大きな成長を遂げている。成功の背景には、リスクを低減するプロジェクトの運営方法のうまさもあったが、最大のポイントは、顧客の“ニーズの芽”に気づくところにあった」(及川氏)

  逆説的だが、業界経験や先入観があればあるほど、顧客のニーズに気づきにくくなるという。ではどうすれば“ニーズの芽”をつかまえられるのか。