システムソリューションを提供するサインポストが開発した「ワンダーレジ」は、AIを搭載した全く新しいレジスター。レジ待ち時間の短縮に加え、コンビニエンスストアなど小売店舗で深刻化する人手不足の"救世主"として注目されている。
蒲原 寧(かんばら やすし)
代表取締役社長
ランチ時のコンビニエンスストア、ペットボトルのお茶1本とおにぎり2個を買うために長蛇の列に並んだという経験はないだろうか。こうしたレジ待ちストレスを解消する「ワンダーレジ」が誕生した。このレジではAI(人工知能)が商品を一括で認識する。根本にあるのは、脳の神経回路にヒントを得たAIの学習手法、ディープラーニング(深層学習)である。
ワンダーレジでは、複数台のカメラが商品の特徴的な要素を見つけ出して識別。その情報が、あらかじめ登録された商品情報にひも付けられており、電子マネーで決済できる。
商品には何も付け足さず、
既存の仕組みが利用可能
開発したサインポストの蒲原寧社長は、開発のきっかけを「公共機関にはETCやICカードなどの自動改札機があるのに、なぜレジ前ではそれがなく、長蛇の列ができてしまうのか」という疑問だったと語る。
本業は金融・行政機関向けのシステムソリューションだが、同社の企業理念は「孫の代まで豊かな日本を創る一翼を担う」というもの。世の中の課題を解決するという意味では、ブレはなかった。
3年半前に開発プロジェクトチームを立ち上げ、電気通信大学の柳井啓司教授の協力を得て共同研究を行った。AIを利用するワンダーレジの大きな特徴は、「人間(従業員)を機械(AIレジ)に置き換えるだけ」というシンプルさである。蒲原社長は、「レジを機械化するというと、ICタグを使った決済システムがありますが、その場合、ICタグを商品に取り付ける手間やコストがかかる上、機械も大型化し使用済みICタグを廃棄する問題も発生します。ワンダーレジは、商品に何も付け足さず、既存のPOSシステムの仕組みはそのまま使えるというメリットがあります」と説明する。
またワンダーレジには、商品を購入する人の顔を映すカメラも搭載されており、AIが年齢や性別を判別する。情報を蓄積することで、マーケティングにも活用できるという利点がある。
有人レジとの
"ハイブリッド化"を目指す
ワンダーレジが狙うのは、CVS(コンビニエンスストア)など小売店舗における人手不足の解消と、レジ待ち時間の短縮である。同社によれば、目指すのはワンダーレジの導入による完全無人化ではなく、有人レジとの"ハイブリッド化"だという。
ワンダーレジは、既存のレジ1台のスペースに2台置ける大きさで、同社の試算によれば、有人レジ3台を「有人レジ1台+ワンダーレジ4台」に置き換えれば、従業員4〜5人から2人程度を削減できるという。有人レジを残す理由は、CVSでは宅配便の取り扱いやチケットサービス、公共料金の支払いなどがあるからだ。
ワンダーレジは今年3月から販売を開始。従来の小売業のシステムを変えないで済むというメリットは、人手不足に悩む小売店舗のソリューションとなり、同製品に対する関心は日ごとに高くなっているという。「2020年までに3万台の導入を目指す」と力強く語る蒲原社長。ワンダーレジが、日本のレジ待ち風景を変えることができるのか、注目したい。
問い合わせ先
サインポスト株式会社
ホームページアドレス:http://www.signpost1.com/