新築マンションの価格が上がり始めたのは、アベノミクス効果が生じた2013年から。価格高騰に伴い新築マンション市場は減速、昨年ついに中古の成約数が新築の供給数を上回った。そんな新築マンション市場に最近、ようやく新たな変化が兆し始めている。

価格高騰で販売戸数減
市場に“元気”は戻るか

 「2016年は新築マンション価格のさらなる上昇によって、売れ行きの減速感が強まった年でした。17年に入っても依然厳しさが残っており、好調の目安である初月契約率70%には達していません」

 そう語るのは、マンション業界の内情をよく知るトータルブレイン社長の久光龍彦氏。長年、長谷工グループ各社の経営に携わってきた業界の〝ご意見番〟だ。

 不動産経済研究所によれば、16年の首都圏マンションの供給戸数は前年比11.6%減の3万5772戸。3年連続で減少している。

 供給減の背景には価格高騰があり、その裏には建築コストの上昇がある。特に建設労働者の人手不足問題が大きい。また土地の取得競争によりマンション用地仕入れ価格も高騰し、二重の上昇圧力が加わってきた。

 アベノミクス開始以降の4年間で首都圏マンション価格は平均20.9%アップ、東京23区に限ると25.5%もアップしており、価格上昇に伴って売れ行きも減速。加えて近年、大手企業の寡占が進んだことも供給減に影響した。

 「リーマンショック以前は首都圏マンション供給戸数の10%程度だった大手4社(三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス・住友不動産・野村不動産)のシェアが年々伸びて、16年は44.4%、17年は50~60%まで行くのではないかとみられます」(久光氏)

 財務基盤がしっかりした大手各社は、売れ行きが鈍るとみれば供給を絞り、着実に売れる数だけを出していく。こうして価格高騰と販売戸数減少が進んできたわけだが、17年に入って少しずつ市況に変化が見え始めている。

 まずマンション用地に関しては、郊外で取得競争が一段落して、価格調整が入り始めた。

 「施工費については根本が人手不足ですから簡単には解決しないのですが、高騰が続く都心部以外はだいぶ落ち着いてきており、若干下落の動きも出てきています。ゼネコンが積極的に現場を取りに来るようになりました。物件価格はまだ大幅に下がってはいませんが、上げ止まり感が出て、回復の兆しが見えてきました」(不動産経済研究所主任研究員・松田忠司氏)