大震災の教訓を生かして推進する
災害に強いネットワークづくり

表:ドコモの「新たな災害対策」拡大画像表示

 東日本大震災を受けて、ドコモは「新たな災害対策」を打ち出した。その基本的な考え方は大きく三つの分野の10項目からなっている(表)。

 第1に、重要エリアの確保。これは人口密集地や行政機関の通信を確保するための施策である。

 対策の柱となるのが、図2に示した大ゾーン方式の基地局(項目①)。通常の基地局とは別に、新たに直径約14キロメートルの通信を担う大ゾーン基地局を全国に約100ヵ所設置する。耐震性の高いビルや鉄塔などの上に配置することで、従来の基地局よりも守備範囲が広くなり、万一周辺エリアの基地局がダウンしても、この大ゾーン基地局だけで広範囲をカバーすることができる。また、無停電化や伝送路の二重化などにより、災害時にもその機能を失わない高信頼性を追求する(図2)。

図2:大ゾーン基地局の構築 直径約14キロメートルの通信を担う大ゾーン基地局は通常の基地局とは別に、全国約100ヵ所に新設される予定。人口密集地を中心に設置することで、全国の人口の約35%をカバーする。災害に強い高信頼性を確保するため、無停電化や伝送路の二重化などの対策が施される。

 もう一つの柱は、重要エリアの基地局の停電対策だ(項目②)。その目的は、都道府県庁、市町村役場などのある重要エリアで停電時でも通信を確保すること。そのために全国の約1,900の基地局に対する無停電化、またはバッテリーの24時間化を推進。対象となる基地局は人口の約65%をカバーすることができる。

 第2に、被災エリアへの迅速な対応。衛星携帯電話の配備台数を大幅に増やす(項目③)ほか、衛星通信を用いて伝送路を確保する移動基地局車や可搬式の移動基地局の増強(項目④)などにより、サービスが中断しているエリアでの迅速な復旧を図る。また、衛星ではなくマイクロ(無線)波通信で伝送路を構築する手法も用いて、非常時に対応するための準備を進めている(項目⑤)。

 第3に、ユーザーのさらなる利便性向上に向けた取り組みがある。この分野では五つの対策が並んでいる。

 代表的な施策が、被災時における音声メッセージサービスの提供である(項目⑥)。災害時には、ネットワークが混み合って電話が通じないことがあるが、そんなときにもパケット通信は比較的つながりやすい。そこで、パケット通信方式を用いた「災害時音声メッセージサービス」を開発。実用化されれば、電話がつながりにくいときでも、声でメッセージを届けることができ、災害時の安否確認メッセージなどを伝えやすくなる。

 復旧エリアマップは今回の震災で初めて開設された(項目⑦)。サービス中エリアとサービス中断エリア、復旧予定や各種の支援情報などをわかりやすく表示した新システムは、極めて短期間のうちに構築され、3月20日から情報提供を始め、10日間で20万以上のアクセスを集めた。

 また、災害用伝言板の音声ガイダンス対応(項目⑧)、自治体との連携によるエリアメールの機能拡充(項目⑨)などの予定もある。さらに、普及が加速するSNSなどのさらなる活用も検討されている(項目⑩)。新しい機能と多様な情報を取り込みながら、ケータイはこれからも強く進化し続ける。

 以上の10項目を推進することで、ドコモのネットワークはより信頼性の高いものになるはずだ。東日本大震災からの復旧作業の一方で、ネットワーク強化に向けた取り組みはすでに始まっている。

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