ここ数年、日本企業の大きな経営課題となっている「働き方改革」だが、なかなか成果が上がっていないのが実情だろう。その原因の一つとして、そもそも「会社」の在り方が時代にそぐわなくなっているということはないだろうか。決められた場所に集まって、決められた時間働く「会社」という存在は、「働き方改革」を阻害している面はないのか。ダイヤモンド・オンラインでの連載「組織の病気~成長を止める真犯人~」が人気の、プリンシプル・コンサルティング・グループ代表秋山進氏に話を聞いた。
会議の機能不全、マネジャーの能力不足
そして何より明確な企業戦略の欠如が問題
「『会社』は必要か?」。コンサルタントとして数多くの組織改革に携わってきた秋山進氏は、この問いに対して「集まって働くことには大きなメリットがある」と答える。知的生産活動においては、実現できそうなアイデアを出し合ったり、クリティカルパスを設定したり、ゴールの妥当性を検証したりする。このプロセスの中で、一人で進められる仕事はほとんどない。「複数の視点から仮説を立てるなど、関係者が常に交流できる環境が必要」と語る。
しかし、その働き方の中身に問題はないか、と秋山氏は続ける。会社の時間は、
(1)朝礼や会議などの「組織の時間」
(2)文書の作成や顧客との連絡など一人で仕事をする「個人の時間」
(3)半分公的で半分私的な「ワイガヤ」の時間としての「集団の時間」
の三つで構成されるというのが秋山氏の持論。日本企業では、この非公式な「集団の時間」に、多くの実質的な議論が行われてきた。
代表取締役
秋山 進氏
「働き方改革は、単純に『集団の時間』の削減につながりやすい。でもやってみると会社がうまく回らなくなる。だから元に戻す。これまでの働き方改革はこれの繰り返しです」と秋山氏は指摘する。「集団の時間」を削減すると、瞬間的にコスト効率は向上するものの、価値向上の機会が減る。結果として競争力が低下し、企業自体が衰退してしまう。
ではどうするべきか。秋山氏がまず指摘するのが、公式の会議の中身の充実。そのためには、マネジャーの能力も問われる。優れた会議運営能力、ファシリテーション能力など、プロとしての力量が必要だ。明確な企業戦略も必要になる。それがなければゴールも設定できないし、適切な資源配分もない。公正な人事評価もできなければ、在宅ワークの中身を評価することもできない。これではどんなに環境が整備されても、働き方改革は実現できない。
秋山氏は具体的なアプローチとして、「外資系のITサービス企業が参考になる」と話す。その代表的な企業であるヒューレット・パッカード・エンタープライズは、数年前からグローバルでの「ワークプレイス変革」に取り組み、成果を上げている。社員によって考え方が異なる「ワークスタイル」ではなく、会社が働きやすい環境を整える「ワークプレイス」に焦点を当てているのが特徴だ。
実際に同社では、フリーアドレスなどのファシリティ面での整備だけでなく、全社員が利用できる在宅勤務制度や、定期異動を行わないことなど人事制度面でも斬新な取り組みを進めている。そこには、「働き方改革」で成功を収めるためのヒントが多く隠されている。
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