【導入case1:フィリップス エレクトロニクス ジャパン】
フレキシブルな働き方ができる「フォーカスルーム」を活用

「このビルにオフィスを構えて約30年。長い間、まとまったリフォームや什器の交換をしてこなかったため、2016年の暮れから、業務を継続しながらの全面改修に取りかかりました」と語るのは、フィリップス エレクトロニクス ジャパン リアルエステート部部長の大倉知彦氏。

フィリップス エレクトロニクス ジャパン
大倉知彦・リアルエステート部部長

 改修にあたって重視したのは、まず「変革」そのもの。表面的な化粧直しでなく抜本的な変革を行うことが目的となった。そこで重視したコンセプトは「フレキシビリティ」であり、これは同社が全世界共通でオフィスの重要指針として掲げている。各々が求める働き方に応じた「場」を用意し、選択肢を与えるというものだ。

 それに沿って個人のデスクスペースを減らし、オープンミーティングルームなどの広いスペースを確保した。

「執務室もフリーアドレスで、どのフロアで仕事をしてもいいことから自由度が格段に上がり、他部署とコラボレーションも増えました」

 その一方で、人事に関することなど、守秘義務を要することが話せない、海外との電話会議が落ちついてできない、業務に集中できない、といった"弊害"も出てくる。

 それを解消するのが「フォーカスルーム」の設置だ。フォーカスルームとは、1~2人で利用する、防音対策を施した個別スペース。ガラス張りで開放感がありながら、クローズドスペースとして活用できる。

「フォーカスルームも、グループのグローバルスタンダードに盛り込まれています。欧米ではフェイストゥフェイスの面談がより戦略的に行われており、そのため、このような小部屋が不可欠なのです」

執務室内に設置されているフォーカスルーム。予約不要で空いていればいつでも、どの部屋でも利用できる。天井内部には空調音のようなノイズで音をマスクする「サウンドマスキングシステム」、壁面には吸音パネルの「サウンドアブソーション」を設置し、ガラス張りでも音漏れしにくい。

 そんなフォーカスルームにもっとも重要なのは守秘性。声が周囲に聞こえない環境を整える必要があった。

 当然、オフィスの設計段階でも音漏れ対策は行った。しかし、さまざまな制限があるため、求めている領域までは到達していなかったという。そこで、「サウンドマスキングシステム」を導入した。

「隣の部屋にいると、話している声は聞こえます。しかし、明瞭さがグンと下がるため、その内容までは聞き取ることができません。大きな音もあきらかに"角"がとれ、響かなくなりました」

 しかし、音漏れに対しもう一歩シビアさを求め、さらに「サウンドアブソーション」を併用。壁面に吸音材を取り付けることで、透明性の確保のためにガラス張りにしている室内での音の響きを抑制し、「サウンドマスキングシステム」を再調整して、「音」環境をさらに強化した。

フィリップス エレクトロニクス ジャパン
山中万里絵・リアルエステート部ファシリティマネジャー

「当社はフロアごとにイメージカラーを設定しています。サウンドアブソーションは色も豊富なので、各階に合った色を選ぶこともできました。天井内に設置するサウンドマスキングシステムもそうですが、オフィスの意匠を損なわないことも設置のメリットだと思います」(リアルエステート部ファシリティマネジャー・山中万里絵氏)

 オフィスのリニューアルに合わせ、在宅勤務制度など、新たな働き方を推進している同社。自宅で仕事をしてもいいが、静かな環境を望むなら家に帰らずフォーカスルームに籠るという、選択肢も加わった。

「オープンなコミュニケーションを推進するためには、そこでは補えないクローズなスペースも不可欠です。働き方改革は『人事的な働き方の仕組み』と併せて、『働く場となるオフィスの在り方』とセットで考えることが重要です。働き方改革の大きなストーリーの中で、フォーカスルームの持つ機能は大きいと考えています」