国交省の「マンション総合調査」によると、約21%のマンションが、大規模修繕の費用が積立金だけでは足りず、一時金の徴収や借り入れを行っているという。また、積立方式にも問題がある。新築マンションで主流なのは段階増額積立方式だ。

「段階増額積立方式は、大規模修繕を実施するたびに積立額を見直す方式で、その額は段階的に増えていきます。マンションが高経年化し、年金生活者が増えてくると積立額の値上げは大きな負担になります。一時金徴収などの合意形成もしづらくなり、修繕計画に大きな影響が出てきます」

 一方、国交省のガイドラインが推奨しているのは均等積立方式だ。当初から月々の積立額は一定で、将来にわたり安定的な積立を確保できる。資金に余裕が生まれるのでバリューアップ修繕も可能だ。

 ただしデメリットもある。プールする額が大きくなるので、管理により注意を払う必要がある。また、つい財布のヒモが緩み、ムダな工事を発注してしまうことも。こうした問題を防ぐ手立てが設計監理方式の導入だ。

大規模修繕工事に
第三者チェックを活用

 工事のチェックのことを「監理」という。設計監理方式とは、施工会社や管理会社とは別の、中立的な立場のコンサルタントに監理を任せる方式。設計と施工が分離するので工事内容や費用の透明性が確保できる。

「設計監理は、マンションの大規模修繕について豊富な実績を持つコンサルタントに依頼するといいでしょう。建物診断や施工会社選びの段階から入ってもらうことで、適正価格での工事が実現します。コンサルティング料の価値は十分にあります」

 これに対して施工会社にすべてを任せて進めるのが責任施工方式だが、穐山氏はこれを否定しているわけではない。

「責任施工方式でも、いい施工会社に頼み、発注する工事内容をきちんと見極めれば、割安な工事ができます。施工会社も実績を基に選ぶといいでしょう」

 いずれにしても重要なのは、区分所有者の積極的な参画だと穐山氏は主張する。

「マンションを共有財産と考え、人任せにしないこと。組合員が主体性をもって活動に参画し、意思決定してください。そのためには普段からのコミュニティづくりも大切です。そういうマンションであれば、築年数がたっても資産価値を高めていけます」