──コスト競争力を高めるうえで最も重要なのは何でしょうか。

遠藤 1回限りのコストダウンではなく、継続的なコストダウンができる人材を育てることです。言い換えれば、現場が当事者としてコスト削減に取り組もうとする意識を持てるかどうか。同時に、「ここにムダがある」と気づかせるような仕組みも重要です。つまり「見える化」ですが、相見積などはそのための手段と言えるでしょう。新規サプライヤとの比較で「高く買っている」という問題が「見える化」されれば、現場はそれを解決しようとするものです。

──間接業務コストの削減のためアウトソーシングを活用してコスト削減を図る企業が増えていますが、その際の注意点はどのようなものでしょうか。

遠藤 ノンコア業務を外部化するといっても、あらゆる業務はつながっています。外部化した業務のコストが下がっても、トータルコストは上昇する場合もある。社員教育上、マイナスの影響があったというケースも少なくありません。

 たとえば、製造業では一時、設備や機械のメンテナンスをアウトソースする企業が増えましたが、最近はそれを内製化する動きが目立ちます。それが重要な業務であると再認識しているのです。メンテナンス業務を通じて機械の仕組みを深く理解できますし、技術や技能の継承にもつながります。

 人事や経理といった間接業務にも、判断や企画、監督といった要素が含まれています。これらを含めて外部に出すのは、丸投げです。アウトソーシングをうまく活用している企業は、こうした重要な要素を自社に残しています。

 どのような要素が重要か、アウトソースできるかを知っているのは現場です。本社主導で「この業務をアウトソースする」と決めるのではなく、現場主導で「どの業務をアウトソースすべきか」を検討する。そんなアプローチが求められています。

人材育成で実現する
継続的なコスト削減

──購買物品のコスト削減や間接業務のアウトソーシングに対しては、現場が抵抗する場合も多いのではないかと思います。

遠藤 近道はありません。放っておけば、業務は肥大化するものだし個別化、陳腐化するものです。人は誰しも慣れたやり方で仕事をしたいし、業務には慣性のようなものが働きます。企業は業務やコストにメスを入れ続けなければなりませんが、現場の協力がなければ難しいでしょう。遠回りかもしれませんが、業務を熟知したうえで自律的に改善を続ける現場を育成することが最も確実な方法です。

 性急なコスト削減により品質やサービスレベルの低下、あるいは現場の生産性低下を招いた企業の事例は少なくありません。こうしたリスクを避けるためにも、現場をいかに巻き込むか、現場の人材をいかに育てるかを経営者は真剣に考える必要があります。1回限りのコストダウンでは意味がありません。コストダウンのできる人材を育てれば、その後も継続的なコストダウンができるのです。