日本のあちこちで人手不足が深刻化している。多くの企業は採用活動に力を入れようとするが、空前の売り手市場だけにままならない。だが、実は人事評価を根本から変えることで人手不足を一気に解消し、さらに利益を30%拡大できると、あしたのチームの高橋恭介・代表取締役社長は説く。

人手不足の解消策として
「採用」には即効性がない!?

 今、日本企業の多くはほぼ半世紀ぶりの試練と対峙している。厚生労働省が6月30日に発表した5月の有効求人倍率は1.49倍で、バブル期を上回り、1974年2月に付けた1.53倍以来の高水準を記録した。あしたのチームを率いる高橋恭介・代表取締役社長はこう指摘する。

「一方で離職率は2.8%で高止まりし、典型的な売り手市場の様相で、人手不足倒産まで取り沙汰されています。こうしたことから、経営者たちが口をそろえて唱えるのは、『人が仕入れであり、人さえいれば売り上げは伸ばせる』との言葉です」

あしたのチーム 高橋恭介・代表取締役社長

 ヤマト運輸が時間指定や再配達を見直したり、ファミレスなどが24時間営業をやめたりする動きは、国策である働き方改革の一環として捉えられがちだ。しかし、「過剰サービスから脱皮して効率性を高めようとする動きも、裏を返せば、人手が潤沢ならその必要がなかったはず」(高橋社長)なのである。

 しかも、就業労働人口が減少の一途をたどることを踏まえれば、こうした情勢は一過性のものでないと考えるのが自然だ。今後も持続的に人手不足が続き、それが売り上げの伸びを圧迫する要因となってくる。言い換えれば、適切な手を打って十分な人手を獲得している企業が成長し、後手に回った企業が伸び悩むわけである。

 では、具体的にどんな手を打つべきか? その問いに高橋社長は断言する。

「労働力の確保に最も資する施策、それは人事評価を抜本的に見直すことです」

 高橋社長いわく、人手不足の解消において多くの経営者の頭に浮かびがちなのは、直球の発想だという。つまり、「人が足りないなら採用すればいい」と考えるのである。

「しかしながら、認知度の高い企業や人気職種、かなりの好待遇でもない限り、逆風が吹く中ではそう簡単に人を集められないのが現実です」(高橋社長)

 その上、採用は非常に遠回りの施策でもあるという。新卒採用には約2年先を見据えた計画策定が求められており、中途採用にしても、求人広告の出稿から内定までに約2カ月、その後も前職の引き継ぎや移籍の手続きで物理的に時間を要し、合計すれば5カ月程度のリードタイムとなってしまう。

「しかも、日本では一般的に当初の3カ月は試用期間ですが、その間は真の労働力になりません。その上、転職がミスマッチだったことに気付いて辞めていく人も出てくるでしょう」(高橋社長)

 こうした手間や時間のかかる採用という選択肢に対し、既存の社員の生産性を向上させて人手が足りない分を補うことを狙うのが人事評価だ。働くことへの動機付けを行い、日々の行動を変容させることで、結果的に生産性を高めていく。

「例えば社員30人の企業が10%の生産性向上を実現できれば、3人分の労働力が人件費負担ゼロで確保できます」(高橋社長)

 ただし、高橋社長が提唱している人事評価は、既存のものとは一線を画す。

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