冒頭に紹介したように、OFF-JTへの取り組みが後退している背景には、さまざまな要因が考えられる。能力開発基本調査では人材育成に関する問題点についても調査している(図2)。最も回答が多かった「指導する人材が不足している」はOJTの限界を示すものとも考えられるが、注目したいのは「人材育成を行う時間がない」(46.6%)、「育成を行うための金銭的余裕がない」(26.3%)といった声である。

図2 人材育成に関する問題点の内訳
(複数回答)
出典:
厚生労働省「平成22年度能力開発基本調査
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 この結果は、長引く景気低迷で体力を奪われ、目前の対応に追われる企業の姿を浮き彫りにしている。現状の問題点を認めつつも、対応が後手に回ってしまっていると見ることもできる。

PDCAサイクルで
考える研修制度

 OFF-JT、特に研修制度の内容についても、問題を指摘する声がある。多くの企業では、新入社員研修から始まって、入社3年、5年研修、さらには課長、部長など昇進に応じた管理職研修を行っている。

 しかし、こうした研修制度も終身雇用を前提に成り立っている背景がある。雇用が流動化するなかで、多額の費用をかけて研修を行っても、人材が流出してしまっては意味がなくなる。また、昇進と連動した研修制度は、各役職に求められる能力に変動がなければ内容が硬直化しかねない危険性もある。

 研修制度の課題を打破する一つの手段として考えられるのが、PDCAの考え方を取り入れることだ。企業の今後のあるべき姿を見据えてプログラムを組み(Plan)、研修を実施(Do)したあとの効果を測定(Check)、課題を抽出して次のプログラム改善に生かす(Action)という考え方だ。

 グローバル競争の激化をはじめ、企業を取り巻く環境は大きく変化している。そうした変化に取り残されないためにも、研修をはじめとする人材育成制度の再構築が求められている。