──自分をリードする意識を醸成するために、どのようなサービスを提供しているのですか。

石川博久
IWNC代表取締役社長

石川 中国に進出した日本のメーカーの事例ですが、同社の課題は、若手の中国人リーダー育成でした。これまで研修などを行ってきたのですが、なかなか成果につながらない。そこで、当社が提案したのは万里の長城での合宿です。30代半ばのリーダー候補たちを3日間缶詰めにして、自分自身に真剣に向き合ってもらいました。自分の過去を振り返り、深く内省する。また、将来の自分の姿を本気で考える。そんな3日間を過ごす中で、大きな変貌を遂げた参加者は少なくありません。最終日に涙を流しながら、「自分の人生の中で最大の経験だった」と語った人もいます。

八木 劇的に変わるのは、2割か3割かもしれません。リーダー育成はそれほど難しい。ただ、大半の参加者は何かしら大事なものを得て、変化のきっかけにすることができる。このプログラムで重視しているのは、「教えるな、気づかせろ」ということ。ハウツーを教えるのではなく、自分に何が足りないのか、何をなすべきかに気づいてもらう。そのためにも「場」は重要。だから、万里の長城やモンゴルの大草原で合宿を行っているのです。同じプログラムを会議室でやっても、インパクトがなく、気づきにつながりません。気づきを得るためにもそれを絶対忘れないイベントにするためにも、場は大切なのです。

1万時間の旅に向けて
エンジンに点火する

──特別な場所で実施することが重要ということでしょうか。

モンゴルで行われるプログラムの様子。非日常における刺激的な体験によって、プログラムでの「気づき」を長期間継続して思い返し、意識することができる

八木 単にモンゴルに行くだけでは意味がありません。万里の長城やモンゴルは、気づきをもたらす培養風土のようなもの。それだけでなく、真剣な内省のきっかけとなる刺激的な言葉が重要です。私はファシリテーターとして、「君のキャリアは終わっているね」「40年も生きてきて、自分の生きざまも語れないのですか」といったキツい言葉を投げ掛けたりもします。

石川 気づきのポイントは一人一人異なります。自分なりの気づきを導くためには、相手の話を聞き、その人物を十分見極める必要があります。そのポイントを突いた言葉が、変わるきっかけになります。大切なものを置き去りにして周囲に合わせたり、他人の物差しによって自分の方向を変えたりした経験は、誰もが持っているでしょう。そんな自分に気づいた上で、自分の物差しとは何か、自分が生きていく上での軸は何かを考えてもらうのです。

八木 プロフェッショナルになるためには1万時間かかるといわれます。リーダー育成にも同じか、それ以上の時間がかかります。通常の企業が行うリーダーシップ研修はせいぜい数百時間程度なので、到底足りません。研修でできるのは、1万時間の旅をするための気づきと覚悟を植え付けることです。

石川 リーダーへの道のりを、私たちはリーダーシップジャーニーと呼んでいます。IWNCのプログラムの目的は、旅路をスタートするために自分の内部にあるエンジンに点火すること。プログラムの最後には、参加者に一冊の手帖(ジャーナル)を配ります。そこには、リーダーシップに関して考えたことだけを記述してくださいとお伝えします。旅を走破するために、継続的な努力が欠かせません。だからこそ、IWNCはリーダーシップジャーニーに伴走する支援サービスにも注力しています。

問い合わせ先
株式会社IWNC
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