7月1日から電力使用制限令が発動し、企業などの大口の電力使用者には15%の節電が義務付けられるなか、大塚商会では25%削減を目標にかかげ、着実に効果を上げている。LED照明への交換やIT機器の入れ替えなど、同社の取り組み内容と節電で留意した点について聞いた。
――大塚商会では震災前から節電の取り組みを始めていたと聞きました。
実は、2010年に東京都の環境確保条例が施行されたときに、地球温暖化対策の推進が特に優れた事業所に与えられる「トップレベル事業所」の認定を目指して、節電をはじめとする省エネ対策に取り組んでいました。そんななかで東日本大震災が発生し、電力使用制限令発動が不可避となるなかで、規定の15%を超える25%の節電を目標に設定したのです。おかげさまで、今年5月には「トップレベル事業所」認定を受けることができ、現時点で消費電力も前年比25%以上削減することができています。
――具体的な取り組み内容についてお教えください。
事務室の照明のLED化や間引き・照度調整、省エネPCへの交換、看板の消灯、空調運転の見直しなどを行い、本社ビルでは、すでに前年比25%の節電効果を上げています。
照明に関しては、本社ビルは1~3階、各フロアの廊下などをLED照明(1919個)へ換えております。また、6月に竣工した横浜ビルは全館LED照明を採用し(6201個)、一般の照明に比べて年間約93.2tのCO2削減を実現しました。
――IT化の進展のなかで、サーバの電力も見逃せないかと思います。
当社では、複数のサーバを統合して1台の物理サーバ上で複数の仮想サーバを動かす「仮想化」で節電を行っています。亀戸ビルでは、開発環境のサーバ115台のうち63台を仮想化で削減、サーバの消費電力を約86%削減することができました。サーバが物理的に減ることにより、サーバスペースも約3分の1に減り、そのぶん空調消費電力も34%削減させることができました。
――省エネPCをはじめとするハードウエアの入れ替えはいかがでしょうか。
家電もそうですが、PCや複合機なども最新機種のほうが省エネ設計になっていますので、複合機とプリンタの適正台数を見直し、最新機種へ入れ替え、PCもデスクトップからノートPCに入れ替えました。機種を入れ替えるだけで、それ以前と比較すると、約20%の節電効果がありました。現在、バッテリー付きのノートPCは、決められた時間帯は電源をつないでいても通電せずにバッテリーのみで稼働させる「ピークシフト」を導入しており、さらなる節電効果を目指しています。
――そうした一連の取り組みではどのようなことに留意されたのでしょうか。
大事なのは、社員一人ひとりの意識の持ち方だと思います。たとえば、残業時の照明・空調というのも節電の大きな対象となるのですが、当社では20時に事務所の空調・照明をすべて落とし、必要な人だけが再度ONにするという方法をとっています。一斉消灯後の照明、空調の運用は、社員の省エネ意識の持ち方に委ねられるのですが、その積み重ねが大きな効果を生みました。
――節電は多くの企業にとって切実な課題となっています。そうした企業へのアドバイスをお願いします。
お金をかけて省エネ設備を導入することがすべてではありません。小さなことでも、できることからすぐに始めるべきです。また、それを継続することが大切で、大きな効果を生むことができると思います。
また、現在会社が「何で」「どれだけの」電力を使っているのか、「見せる化」することが大事です。現状を把握できなければ、節電対策の立てようがありません。さらに、就労者への啓発活動は重要ですが、それだけではカバーしきれない部分もあります。ルールや運用により、社員に負担をかけては、節電対策もうまくいきません。システムをうまく活用することで、現在の環境や業務効率を維持しつつ、節電を実施していくことが重要だと思います。当社の節電は、「東大グリーンICTプロジェクト」の、「明るく、涼しく、サクサク」というコンセプトと同じ考え方で進めています。